第3話

 俺は王城の門の近くで座ってぼーっとする。

 冷静になって来ると気づく。

 この風景は俺がやっていたエロゲの風景に似ている。


 いや、似すぎだろ。

 それにステータス画面も同じに見えていた。

 俺はすぐにステータスを開く。


____________________

 ハヤト 男

 レベル:1

 固有スキル 訓練:LV1

 ジョブ:闇魔導士

 体力:0

 魔力:0

 敏捷:0 

 技量:0

 魅力:0

 名声:0

 スキル:無し・武器:無し・防具:無し

____________________




 同じだ!

 ステータスの初期値が0だ。

 この特徴は俺がやっていたエロゲと一緒だ。

 固有スキルとジョブの名前!

 全部一緒だ!


 深呼吸だ!

 冷静になれ、俺!

 王城の時のように思考停止してはいけない!


 特に初期ステータスが0なのはあのエロゲしか見た事がない!

 プリンセストラップダンジョン学園・NTR!

 ハードなシーンが満載で、アクションRPGとしての出来も高い。

 地味に全年齢版も発売され、オンラインで協力プレイも出来る。


 有名ではないが知る人ぞ知るゲームだ。

 だが、まだ確信は持てない。

 違う部分もあるのだ。


 まずあの太った王は知らない。

 ゲームで見た事が無い。 

 ゲーム開始直後は4人の王女が出てくる。


 ん?待てよ?

 ウェールを付けたあの4人の女性の髪色!

 4王女と一緒の金髪だ!

 

 確信が持てない。

 俺はすぐに走りだした。


 横目で王城の門にメインヒロインのファルナが居たような気がした。

 多分気のせいだ。

 このエロゲの町人もほぼ女性で皆可愛い。

 見間違いだろう。


 そんな事より今は確認が先だ!

 俺は王城の周りを一周した。




 ……似ているでは済ませられない。

 ほとんどのキャラが若い女性で皆日本では考えられないほど薄着だ。

 雪が降っていても薄着なのはエロゲの世界と同じだ。


 そして手の甲を見ると皆紋章が浮かんでいる。

 紋章装備か。


 やっぱりそうだ!

 同じだ!

 間違いない!

 俺はエロゲの世界に転移したのか。


 待てよ、落ち着け、俺落ち着け。

 今何年だ?

 ゲーム開始時と同じ時間か?

 

 俺が引っかかっているのはあの太った王だ。

 あんな奴は居なかった。

 召喚時期が違う場合も考えられる。

 

 俺はステータス画面を操作して日付を見る。


『王国歴999年冬の月58日』


 この世界は春の月・夏の月・秋の月・冬の月の順に月がめぐる。

 4つの月それぞれ90日。

 360日で1年となる。


 そしてゲームが始まるのは王国歴1000年春の月1日目だ。


 俺はゲーム開始の30日ほど前の世界に転移したのか。


 時刻は世界と同じ24時間で街にアナログ時計が見える。


 なるほど、このゲームは王が居なくなり、4人の王女から王を決めるのが最初のストーリーの軸になっている。

 ゲーム開始時にはもう居なかったわけだ。


 ゲーム開始前ならまだ余裕がある。

 ストーリーは無視して今は力を蓄えるのが先だ。

 学園入学イベントすら起きていない。

 いや、入学できるかどうかも怪しい。

 俺はステータスを眺める。

 




____________________

 ハヤト 男

 レベル:1

 固有スキル 訓練:LV1

 ジョブ:闇魔導士

 体力:0

 魔力:0

 敏捷:0 

 技量:0

 魅力:0

 名声:0

 スキル:無し ・武器:無し ・防具:無し

____________________


 固有スキルの訓練は条件が揃えば強くなる。

 この固有スキルの本質はスキル取得にある。

 時間さえ気にしなければいくらでもスキルポイントを貯められる。

 だが、この世界は勝手に時間が進んでいく。

 早く【訓練】の封印を解除する必要がある。

 何度もレベルを上げてレベルリセットを繰り返す必要がある。



 そして闇魔導士も育てば強い。

 最初は斥候が理想だが、後でジョブチェンジできる。

 選択できる魔導士の内、唯一の近接武器を使う変則スタイルが使用可能だ。

 殴り魔と呼ばれる。


 ジョブスキルすべてに癖があり、運用に必要な必須スキルも多い。

 だが、スキルさえ揃えば化ける。


 だが、ふと疑問が浮かんだ。

 この世界で死ぬとどうなる?

 ゲームの場合はやられるとゲームオーバーとなり、またセーブ画面からやり直せる。


 だが、この世界で死ねば終わりだ。


 まだ、蘇生のアイテムとかあれば生き返ることが出来る可能性はあるが、そういうアイテムやスキルは無い。


 死んだら終わり。

 それが普通。

 元の世界でもそうだ。

 変わらない!


 生き延びてやる。



 今レベル1でステータスポイントが10ポイント。

 スキルポイントは5ポイントだ。

 早速使おう。

 

____________________

 ハヤト 男

 レベル::

 固有スキル 訓練:LV1

 ジョブ:闇魔導士

 体力:1+10

 魔力:1+10

 敏捷:7+10

 技量:1+10

 魅力:0

 名声:0

 スキル 体力アップ:LV1・魔力アップ:LV1・敏捷アップ:LV1・技量アップ:LV1・スタミナ自動回復:LV1 ・武器:無し ・防具:無し

____________________


 定石通りに固有スキル訓練&闇魔導士向けのステータスとスキル振りだ。

 体力・魔力・敏捷・技量にステータスを0のままに出来ない仕様はそのままだ。


 スキルには3つある。


 固有スキル:特定の条件をクリアしなければレベルアップ出来ない。


 ジョブスキル:そのジョブでないと覚えることが出来ないスキル。


 基本スキル:皆共通して取れるスキル。



 俺は一切闇魔導士のジョブスキルを取得していない。

 今はそこに割く余裕が無い。

 闇魔法スキルの運用に必要な基本スキルを取得するポイントも足りない。


 体力を上げればHP・物理攻撃・物理防御が上がると言った具合に1つの項目にステ振りするだけで複数の能力が上がる。


 このゲームのステータス振りはバランスも必要だ。

 体力を上げないと魔物の攻撃を受けて死ぬ

 魔力を上げないと魔法で大ダメージを受ける。

 敏捷を上げないとスタミナ切れをすぐ起こす。

 技量を上げないと状態異常を受ける確率が跳ね上がる。


 その為通常は取得しないステータスアップ系スキルを取った。

 というか、固有スキルが訓練の場合この方法が普通だ。

 訓練の固有スキル&闇魔導士の場合、しばらくレベルアップ出来ないデメリットがある。

 ステータスアップのスキルは必要だ。


 その上で敏捷を上げた。

 敏捷を上げる事で、スタミナ・速度と特定の武器種の攻撃力も上昇する。

 ナイフの攻撃力も上がるのだ。


 特にスタミナは大事だ。

 敏捷を上げなければすぐにスタミナ切れを起こす。

 動けなくなれば魔物を狩れず、経験値を取得しにくくなる。


 次は紋章装備だ。

 今は制服を着ているがこれでは戦えない。 


 まずは紋章装備を手に入れる為ショップに向かう。 

 俺がショップに向かうと意外な顔がいた。




「エリス!」

「どうして僕の名前を知ってるんだい?」


 そこにはメインヒロインの一人、エリスがいた。




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