第46話

「はぁ………!」

朝早くからネイサスは、外で剣の稽古をしていた。

彼は兄妹の中で唯一、魔法は使えない分、剣や弓、槍といった武器を使うのである。

「朝から早いですね」

スライスは、人間形態のまま、朝の日課としてラジオ体操をしに来たことから言ったのである。

「あ、ああ。お前は…?」

昨日は見掛けなかったことから、剣を鞘へと戻しながら返した。

「これは失礼。僕はシリウス様に生成して貰った、スライムのスライスです。昨日は挨拶が出来ず、すみません」

人面樹生成に必要となる木の枝収集していたことから、昨日はいなかったのだとスライスは言ったのである。

「生成…?」

「はい。シリウス様は魔物を生成し、この地をスローライフ化したいと考えているみたいですから」

「そういえば、そう言っていたような…。ただ、魔物は人間にとってペットとして酷い目に遭っていると聞いているが…」

「それは、エルフも同じことでしょう。だからこそ、僕は基本的に人間形態でいるようにしているんです。本当はスライムの方が楽なんですけどね…」

「…そうか。無理して人間の姿にしなくてもいいぞ」

「そうですか…では」

お言葉に甘えてスライスは、スライムの姿に戻ったのである。

『スライムのほうがおちつくのー』

「………その口調はフリックにそっくりだな」

『そーなの?』

「ああ。もし、無事にフリックを見付け出すことが出来たら…」

『ぼく、ともだちになってあげてもいーよ?』

「あ、ああ。ありがとう。両親を亡くして以来、あいつには寂しい思いばかりさせているからな…」

兄たちだけでは、なかなかフリックに負った傷は、癒やしてあげることが出来ないのだとネイサスは言うと、やっとのことで、シリウスは起きて来たのである。

「早いな…二人とも」

まだ、朝の6時だというのにとシリウスは、欠伸を繰り返しながら言った。

「ああ。俺は朝の習慣でな…」

『ぼくはたいそーなの』

スライム姿では、余り体操しているようには見えないものの、スライスはそう返したのである。

「そうか。そういえば、ネイサス。お前は魔法が使えないんだって?」

さっきレイオスから聞いたことから言った。

「ああ。マナはあるんだが、精霊魔法とか出来ないんだ」

「だったらさ…?」

シリウスは、その辺に落ちている木の棒を拾いながら、魔力を込めると、空へとスラッシュするかの如くで放ったのである。

「な、何だ…!?凄い技だな…」

「ああ。魔力を込めて放つ技なんだ。魔法が使えないなら、それなら出来るんじゃないかと俺なりに考えて初めてやってみたけど…」


この世界で、思ったことが出来るんだなと俺は思った。

考えてと言うけど、実際は違うんだな。

マンガで『ア○ンストラッシュ』をこの世界流に真似てやってみただけだし。


「ふむ………やってみる価値はあるかも知れないな」

ネイサスは、シリウスがやってみたような感じで、魔力を剣に込めてみたのである。


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