第45話
「ううぅ………もう………あ、あるけないの………」
縄目で擦られながら、赤と白で汚しつつ、フリックは苦痛の声を漏らしてしまい、半分近くで意識を手放しそうになっていた。
「まだ、よしとは言っていないぞ」
無理矢理とコーツは、フリックの意識を引き摺り出したのである。
「つぅ…!ううぅ………」
何度、意識を失っては引き摺り出されながら、漸くとフリックは、本当に束の間という浅い眠りの中に落ちていったのである。
「太陽が昇り次第、抽出作業再開だ。それまで、ゆっくりと休んでおくんだな…」
そうカーツは言い残すと、鍵を厳重に掛けると共に彼らは、その場を後にしたのである。
「…本当に凄い部屋だな」
レイオスやエリオスから聞いていた通り、ネイサスは用意された部屋を見ながら言った。
「どこも同じ部屋だからな…」
一応、各階にある寝室は確認したのだ。
どこもかしこも同じ部屋の設備だったのだ。
ふかふかの寝心地の良い良質な素材で造られたであろう、布団と枕。
何しろ、布団と枕は、2代目魔王のグレイズ・リノベイションの好みだったらしい。
そこにわざわざと、前世名の鈴木爽美って表記するかなと俺は思った。
まあ、いいけどさ?
それにもうすっかりとさ?有り難くと使わせて貰っているからな。
「あたし、故郷にいた時は雑草にシーツを引いただけだったよ」
「それは…人間の暮らしとしては質素だな」
「だって…あたし。アーノルド連邦出身だもん」
「…そ、それはご愁傷様。俺の知っている人間の国とは違うんだな」
レイオスは、夕飯前に休んだせいか、少し目が冴えているが故に眠れずにいたことから返したのである。エリオスは、何だかんだと色々と疲れたらしく、夕飯後はすぐにまた、眠ってしまったのだった。
「それにね…色々な国に行ったことがないし、さっきの地図を見て、ホントにあたしって色々と知らなかったんだなって…」
魔法入門書を通して魔法の特訓する毎日を送りつつ、雑草拾いしかしなかったことを思い出しながら、ミレイは返したのである。
「人間も色々とあるということか。じゃあ…俺はもう休むとするか」
何だかんだと疲れを取りたいことと、明日の朝は早いことから、俺たちは部屋で休むことにしたのである。
「ネイサスたちは…無事にフリックを見付け出しただろうか」
ルシウスは、まだ生まれたばかりのフリックの絵を見ながら、誰よりも大事な妹から目を離した後悔から呟いた。
あの時、ふと目を離さなければと何度も思っていた。
「ルシウス兄さん。大丈夫だよ。フリックは絶対に生きている」
「…そうだな。マイラス」
マイラスの淹れた、紅茶を含みながらルシウスは返したのである。
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