第18話

「大分と魔石は集まったな…」


俺はリベルダ領土内にあるだけと言っても良い位、魔石を集めていた。

他の大陸に行けば、更にあるかも知れないが、流石にそれは拙いだろうし。

なので、自分の住む領土内ならさ?

幾ら魔石を拾っても文句は言われないだろう。

つーか…リベルダ領土を与えられたものの、誰もいないってのは。

何だかなぁ。

未だあの石以外の転生者以外と遭遇する気配がないとはね。

まあ、流石にさ?

あのドスの利いた声のオッサンがエルフとして転生しているとはいえ、アレから既に5万年経っている世界だ。

生きている訳はないよな。

幾らエルフが長寿とはいえ、5万年も生きているエルフって聞いたこともないし。


「それはそうと…この魔石。色が付いていないな。透明の魔石を拾ったんだけど、使えるのかどうか確認してみるか」


≪無の魔石-分析-≫

・透明の魔石。

・主にスーレシア王国に落ちていることが多い。

・魔力を込めることで、精霊の魔石や生活用の魔石等などと活用することが出来る、貴重な石。


「ふむ。貴重な石か。その割にはザッと100個は拾ったんだが…。とにかく頭の片隅のどこかで覚えていたら、何かに使うか」


今は調味料を作りたい。

料理する際、味付けがないと意味が無いからな。

その後は野菜とか肉とか魚だよな。勿論、果物も。

一応、リベルダ領土内を探索した際、海っぽい場所はあるからな…。


「瞬間移動魔法で帰るとするかな。流石にこの距離から歩いて帰る気にはなれん…」


随分と歩いて来たモノだ。

意外と疲れは感じなかったけど、それも今の身体があってこそだよな。

前世だったら、絶対に息切れ確実だし。

それはそうと、この長髪。邪魔だよな。

一纏めにしておくかとゴムで縛ると、俺は瞬間移動魔法で、リーベルタース城をイメージしながら唱えたのである。



「おっ!瞬間移動魔法もちゃんと使えるようだ。ホント、異世界様々って感じだ」

さっきからガンガンと魔法を使っていながら、未だ驚きの連続だぜ。

さてと、調味料をガンガンとプラントを通して生成していくか。


「そうだなぁ…。この辺りにプラント畑にするかな。台所から一番近い場所だし」

すぐに取りに行くことが出来る場所として、台所からそんなに離れていない場所で、俺はプラントを生成することにしたのである。


「生成書によると、赤の魔石を粉末にして俺の世界の塩を混ぜて…最後にマナを適量に注入するだけと書いてあったな」

うんうん。そうだ。そう書いてある。

改めて魔物生成書を読み直しながら、俺は≪ソルト・プラント≫の生成を始めたのだった。






「ここを出て行くだとっ!?」

リベルダ領土から目と鼻の先にある、アーノルド連邦という名前だけの廃墟と化している国に住む、名だけの貴族であるケイネス・A・アッシュベインは、旅支度をしている娘に向かって言った。

「そうよ。雑草しか育たない国にこれ以上はここに住み続ける気はないわ。お父様」

「だからと言って…出て行く理由にならん」

「十分に理由になるわよ!このまま飢えて死ぬよりはマシよ!」

「民を…置いて行く気か。ミレイ」

「…貴族として民を大事にするのは当たり前のこと。でも、このまま…何も手を尽くすこともしないまま、飢えながら死ぬ気はないわ。大丈夫。きっと北に行けば、昔のように豊かな国に戻す方法はある筈よ」


それにミレイは、自身の持つ不思議な力について疑問に思っていた。

書物を読んでも、その力を扱うために魔法という存在を知っても、その形処か何も出来ないのだ。

伝説の魔法使いフォルナと同じく伝説の僧侶フィルカの残した書物は、何万年経つ今も出版続けられ、貴族を始めとする人間に広く知れ渡っているものの、誰一人と魔法は使えないのである。


「…分かった。これ以上は何も言わん。自由に生きろ…。ただ、貴族という誇りを忘れるな」

「…分かっているわ。お父様」

ミレイは、小ぶりのリュックとナイフを持って北へと旅立ったのである。

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