金雀ラヴネツィカ

エリー.ファー

金雀ラヴネツィカ

 俺は、知ってるんだ。この世の真実を。

 誰も知らないこの世の真実を。

 嘘じゃない。

 本当なんだ。

 信じてくれ。

 踊り狂うしかないんだ。

 頼む、もう帰れないんだ。

 助けてくれ。


 これは大いなる陰謀だ。

 多くの人は巻き込まれ、悲しみの渦の中にいる。

 気づいたものだけが救われる。

 助かるために、多くを犠牲にしなければならない。

 誰もが同じ場所に立つことはできない。

 ここから先は、真実だ。

 裏の組織が俺たちを追い詰めにやってくる。

 頼む。

 一緒に来てくれ。

 死にたくないんだ。

 俺はまだ死にたくないんだ。

 一人で進むのが寂しいんだ。

 助けてくれ。助けてくれ。助けてくれ。


 まず、俺たちはこの世界の裏側を理解できていない。

 そう、それは事実だ。

 でも、この世界に裏側があることを知っているのは、俺たちだけなんだ。

 選ばれたんだ。

 俺たちは。

 世界や秩序や運命に。

 いや。

 宇宙に選ばれた存在なんだ。

 この世界の本当の姿を調査し、それを世界に伝える。

 この仕事を大切にしたいんだ。

 分かるだろう。

 仲間が必要なんだ。

 俺たちは仲間でファミリーで運命共同体だ。

 な、そうだろう。

 なんだよ。

 なんで頷かないんだよ。

 戦うんだろ、俺たちが戦うんだろ。

 巨悪と、悪いやつらと、いけない人たちと。

 俺たちはジャスティスなんだ。


 正義の名のもとに貴様をぶち殺す。

 ジャスティスビーム。

 ジャスティスフラッシュ。

 ジャスティスバースト。

 この世のすべての悪を滅するためにやってきたぞ。

 

 あのさ、ここに薬があるだろ。まだ世の中には出回っていない薬なんだけどさ。これが凄い効果があるんだよ。で、これをたとえば誰かに売るだろ。で、その誰かも別の人に売るんだよ。そうすると、その利益がお前の方にも入ってくるんだ。な、すごく不思議だろ。俺は、そういう凄い仕組みを凄い人からたくさん教えてもらえるんだ。だからさ、お前にも教えてやろうと思って、ここに呼んだんだ。なぁ、一緒にやろうぜ。で、世界変えちゃおうぜ。で、お金持ちになっちゃおうぜ。え、何が。なんで、この薬を売ると世界が変わるのかって、いや、それは別にそういう意味で言ったんじゃなくて。は、これ詐欺なんじゃないかって。お前、何言ってんだよ、俺のことが信じられねぇのかよ、マジでバカなんじゃないの。いいか、この薬はすげぇんだよ。俺は、これを飲んだ後にめっちゃ元気になったんだから。え、そんな気がしてるだけだって。いやいや、なんだよ。お前、友達じゃねぇのかよ。俺は、お前のことが大事だからこの話をしに来たのに、もういいよ。いいっ、帰れよ、胸糞わりぃな。マジでがっかりだよ、マジでがっかり。




 お前にはアイデンティティがない。

 お前にはない。

 何もない。

 失ったのではない。

 最初からない。

 だから、そういう選択をする。

 だから、騙される。

 だから、疑い方を間違える。

 だから、進むべき道を見失う。

 お前にはアイデンティティがない。

 お前には一切ない。

 それが大切であることも分かっていない。

 何故、それがないと困るのか。

 何も分かっていない。

 仮に誰かから教えられて分かったとしても、仮に誰かの力を借りてアイデンティティが手に入っても。

 それは粗悪品だ。

 お前は、お前に合ったアイデンティティを見つけなければならない。

 それは、どこにもない。

 お前の中にある。

 だから、お前は、お前だけの力で、お前の中から掘り返さなければならない。

 ただし。

 たまに、だが。

 失敗して死ぬ人間が出る。

 でも。

 アイデンティティがないなら、死んだ方がいい。

 社会のために死んだ方がいい。







「上記の文章はすべて同様の目的によって書かれたものである」

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