deep sleep

@amigajapan

第1話

「おやすみなさい」「おやすみなさい」

「さあ、みんなおやすみなさい」


「嫌だ、嫌だ、僕は眠りたくない!」

ガバッと起き上がると、空太は汗だくになっていたことに気づく。右手で顔を拭うと、手には、べとりと生ぬるい水がついていた。

「汗?まただ。またびちょびちょじゃないか」と、あたりを見渡すと「あれ?暗い、ここはどこだ?今は、何時だ?」と、気づいても、何も思い出せない事に不安になるだけだった。

「確か、明るくなかったか?目が覚めた時、、、」と思い出すと、「目が覚めた時?何の事だ?目が覚めたって」と思うと、その瞬間あたりは光で満ちた。空太は、「そうだ、この明かりだ。僕のいる場所。僕の存在」と、青空を仰いだ。そこは、学校の校庭だった。あたりは、人の声で賑やかだった。野球部、ソフトボール部、サッカー部、陸上部、みんな声を掛け合い活気に満ちていた。

空太は青空を眺めていると、突然、頭が猛烈痛くなると空太は、気を失った。

深い記憶の中、空太は目が覚める。「空太、空太、こっちにおいで。ここなら安全だよ。ここなら、ずっと眠れるよ」と、声が聞こえてきた。空太は「そこに行けばいいの?そこに行けば、、、」と、言うと「空太!空太

!大丈夫かよ?起きろよ!」と、声が聞こえると、瞼を開けると最初に目に入った者に、「兄ちゃん?風兄、風兄、、、風兄!風兄!」と言うと「風兄!風兄!」と泣きながら抱きついた。風兄は、「お、おい!何だよ?キモイぞお前?くっつくなよ」と突き放すと、「怖かった、怖かった。一人で、僕一人で、誰もいなくて。僕、僕、、、」と泣きじゃくっていると、風兄は、「おい、何があったんだよ?お前らしいと言っちゃ、お前らしいが」と言いながら、抱き寄せると軽く頭を撫でた。その手はとても優しく愛おしいと言う温かな手だった。空太は、涙が止まらず、恥ずかしいと言う気持ちもわかず、優しい手に甘えた。

どのくらい経ったろう?やっと涙が止まり、風兄を見上げると、その温かな手とは裏腹に風兄の顔は、険しく怒って見えた。「風兄?」と声を出すと、風兄の顔はにこりと笑うと「全く、お前はホント泣き虫だな。俺の弟らしいよ」と言いながら、涙を流した。「風兄?」と言葉を出すと、「頑張れよ。空太」と声が聞こえると、その声は消え入りそうなか細くて寂しい声だった。

「風、、、」と言いそうになった時、「空太大丈夫か?しっかりしろよ!」と大きな声がした。瞼が開くとそこには、良く知る顔の男達がいた。「あー、やっと意識が戻った。驚いたぞ。お前ってば、オデコに思い切りボールがぶつかったんだぞ。痛かっただろ」と心配そうな顔をしていた。「いったい何考えていたんだよ、真正面だったのに気づかないなんて」と心路(みち)は言うと、「そうだー、お前がドジなのはわかってるけど、、冷や汗かいたわ」と彼方(あち)が言った。

「ここは?」と空太は聞くと、彼方や心路が答える前に「ああそうだ、校庭でボケーとしてたんだ」と言うと「わかってんじゃねーか!」と、顔面をはたかれた。空太は、ポカンとした。心路は「四季!空太は一応怪我人だぞ。優しくしろよ」と言うと「空太が悪いんじゃん。心配かけるから」と開き直る四季に彼方は「てか、お前女だろ、少しはおしとやかになれよ」と言うと「何で女だとオシトヤカにならないといけないの?だったら、空太は男らしくなれって事だよね?どこが男らしい?この軟弱やろう」と言いながら立ち上がると、空太たちに背を向け立ち去った。彼方は、「ま、確かにサッカーボールで気を失う奴は珍しいが」と言うと「サッカーボール?僕、野球ボールでじゃないの?」と空太は聞くと「野球ボール?だったら大怪我になったろうよ。お前じゃ」とこたえると「ああ、そう。そうだよね。僕じゃサッカーボールで。。」と言うと涙がポロポロ出てきていた。「おい、そんな事くらいで泣くなよ。全く世話のやける奴だな」とため息をつくと、心路は四季が叩いた頬をそっと触った。「痛いっ」と空太はびっくりすると「あ、悪い、つい癖で四季の叩いたとこ触っちまう」と言いながら反対の頬を触った。「お前、ドジ踏むたびに叩かれていて痛み慣れしてんじゃなかったのか?」と彼方が聞くと「あは、慣れてるってそんなに叩かれていたっけ?」と聞き返すと、彼方と心路はびっくりして「彼方!先生呼んで来い!記憶喪失だ!」すると「心路こそ呼んで来い!俺が診てる!」「いや俺こそ診てる」とやり取りしていると「あ、2日に一回は叩かれていた」と空太は言った。彼方と心路は、ドッと疲れたようにひざをつくと「びっくりさせるなよ。お前、記憶喪失になったら大変なんだぞ」と彼方は言うと「そうだよ、記憶が無くなると消」「心路!」と彼方はさえぎると、心路はハッとして止まった。空太ば「どうしたの?心路、氷ったみたいに」と聞くと「内緒さ」と答えると、「ところで、オデコはもう良いのか?」と聞くと「オデコ?、、、あー!痛いっ!痛いっ!」と思い出すなり空太は頭が痛くなった。「ガンガン痛いよぉ〜うぇ〜ん」とまた泣き出した。彼方たちはため息をつくと同時にホッとした。


校庭の端っこ、一番大きな木の下で空太は横になっていた。木陰で直射日光に当らないこの場所は、空太にはちょうどいい観覧席だった。氷の入ったビニール袋を持ってきたのは四季だった。でも今は、袋が破れ中身は溶けていた。

「さ、俺らも帰ろうぜ。四季もきっと校舎で待ってるさ。お前にぞっこんだからな。」と彼方は、寂しそうに言うと、心路は「あれー?あそこにいるの四季じゃないか」と言うと、四季は飛んでいた。四季は、陸上部だった。「四季は、綺麗だよね」と、空太は言うと「おのろけてんじゃねえよ、あついな」と彼方は照れながら言うと、「彼方、ごめんね。譲れないんだ、この気持ち」と熱い眼差しで四季を見つめていた。彼方は、「わかってるさ。気にするな。俺は大丈夫だから」と言うと、空太を立たせると「帰るぞ」と一言言うと空太の手を握り、振り返らすただ前を見て先を歩いて行った。

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