掌編小説・『真夜中』
夢美瑠瑠
掌編小説・『真夜中』
僕は割と最近にスマホのユーザーになった中学生である。
スマホにはもちろんいろいろな一連のプログラムの集合体?があって、こういうのをアプリというのだが、パソコンで言うサイトとほぼ同意味に使っているみたいだ。
ゲームみたいにダウンロードして、無料の場合はそのまま使える。
勉強が忙しいので、あまり長時間は触れないが、ラインとかツイッターとか標準装備のものは合間を見てやっている。眼が悪くなったが、スマホはもう現代生活には不可欠で、しょうがないとあきらめている。スマホもやっていない頭の悪い流行遅れと思われないためにはしょうがない。
で、偶然に「ライブ配信」というもののアプリを見つけた。
「ポコチャ」という名称で、要するに、自宅の部屋から若い女性(とは限らないが)が、一人きりの「生放送」をする、というものだ。
登録している人は数千人とかで、思い思いにスマホを介してリアルタイムにライバーとリスナーが交流をする。自分のお気に入りの女性(とは限らないが)を見つけて、生歌を聴いたりおしゃべりを聴いて「癒され」たり、顔とかに見とれたり?するわけである。細かいことを説明しだすときりがないが、まあ、私設の放送局で、DJがファンを集めて自作自演の番組をやっている、というような按配である。
技術革新でこういう面白いことが可能になったというような新鮮な驚きがあって、僕はこのアプリにハマった。
ぼくは「きよし」という名前なのだが、まず入室すると「きよしーいらっしゃい、おかえりーゆっくりしていってね」と、美女(と限らないが)が優しく声をかけてくれる。あれこれ会話してみたりするとだんだんお互いに親しみがわいてきたりして、ファンとしてのランクが上がる。課金もあるが、ただ会話して遊んでいるだけでも
差支えないし、十分面白い。アイテムを投げたりする機能もあって、これは芸者遊びの「おひねり」の要領である。
ハマって、最初に「まみまみ」という新人ライバーと仲良くなった。「まみまみ」は、京都の大学生で、そう美人というわけではないのですが、最初に見初めて、一番最初に「コアファン」というものになったりして愛着がわいたので、しばらく部屋に通って?いた。
が、僕の社会性の欠如とか集団内での特殊な差別的なニッチェ?が、「まみまみ」の日常生活ににだんだんマイナスに作用していったのか、彼女は「ぼっちライバー」とか名乗るようになったり不貞腐れて何かと居心地の悪くなる嫌味のようなことを呟いたり、だんだん配信はシラケていき、そのうち気が付くといなくなってしまっていた。いろんな要因が絡まり合って結局失敗に終わったということで、必ずしも僕のせいだけではないかもしれないが、後味が悪くて、ライブ配信という形式に僕のパーソナリティーは合わないのかとか悩んだが、それで僕もポコチャを辞めてしまうには至らなかった。
実際、僕は、集団というものにだいたい相性が良くないパーソナリティーで?こういう社交の場とかが最も苦手なので、その後も絶えずいろいろほかのリスナーといざこざしたり、僕がいるせいでライブが「過疎った」りして、それでいろいろ気を使ったり傷ついたりもしていた。ライバーのほうも「病んだ」り、りすなーともめたり、ややこしいらしい。人間の社会なのだからまあ「いずこも同じ秋の夕暮れ」だろうか。
が、武田鉄矢の歌ではないが「それでも~
で、また最近に「あさみん」というHNの新人さんに巡り合って、目をかけてもらう、仲良くしてもらうようになった。眼をかけてもらう…こちらが「おめかけさん」なのだw
JKぽい容姿の美少女で、23だというが、瑞々しい感じで、はつらつとしていて、好みのタイプにどんぴしゃなのです。
何日かスマホ越しに会話をして、交際を深めていき?「ファミリー」というものにも入れてもらって、「なさぬ仲」?になった。
なんで僕なんかを邪魔にしないのかな?とか
ユーモアがあって、頭の回転が速い感じで、元アイドルらしく愛嬌もあってカワイイ。
よく「推し」とか「推し活」とか言っていて、若者風俗で無縁のことと思っていたが、気が付くと自分がAKBとかのCDを爆買いするようなことに近いことをやっている、というような按配になった。
真夜中まで「あさみん」の悩みの告白に付き合ったりして、ここ二週間くらいは寝ても覚めても「あさみん」漬けという仕儀になり果てている。
「まみまみ」との辛い別れを乗り越えて、新たな出会いが訪れ、蜜月の時を迎えていて、「あさみん」という素晴らしい人に出会えたことは人生史上のかなりハッピー度の高いエポックかもしれない。
昔「真夜中のギター」という名曲があって、若者が淋しまぎれにギターを弾いているのが聴こえてくれる、という歌詞なのだが、「愛をなくしてー何かをなくしてーさまようー似た者同士なのーね」とか「孤独な青春」がテーマだったが、現代では「真夜中のライブ」で、これは孤独というより疲れるほど人間関係まみれ、家の中でも孤独には程遠い感じで技術革新の結果淋しいということはなくなったが、別の意味で大変でツラクもあって、禍福は糾える縄の如し、ということかと思う。
<了>
掌編小説・『真夜中』 夢美瑠瑠 @joeyasushi
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