真夜中のラジオ〜恐怖体験〜

徳田雄一

恐怖体験

 真夜中、それは人々が眠りについている時間。その時間でも寝れない人々は多く居る。不眠症が主な理由なのかと私は思う。


 そんな人たちのために真夜中に私はラジオ放送で、色々な体験談を話している。割とこのラジオを聴いてくれている方は多く居るようで、今どき流行りではないがファックスなどを通じて応援メールなどが届くことが毎日続いていた。


 そんな日々を送っていると、ある日の事だった。いつもの様にラジオの放送を終えて帰ろうと、放送局から外へ出て、帰宅途中、夏なのにも関わらず身体に寒気が走り、外から冬のような寒さの風が吹く。


 夜中だからという理由で、珍しく寒い風が吹いているのだと気にしないようにしていたが、あるトンネルに差し掛かった時だった。


 後ろからタクシーが走りながら、トンネルを通って行こうとした時、ふと、私の近くまでバックで寄ってくると、運転手は言った。


「乗りません?」


 私は断った。


「いいえ、歩いて帰りますので」


 すると運転手は苦い顔をしながら言った。


「ここは幽霊のたまり場だそうで、奇々怪々な出来事が起こるらしいんですわ。気をつけてくださいね」

「ご忠告ありがとう」


 タクシーの運転手に礼を言い、再びトンネルを歩いていたが数分経っても出口が見えない。疲れているせいだと思うことにして、また数分歩くが、全くトンネルから出れない。


 何かおかしい。そう感じながらもずっと歩いていた時だった。正面に髪の毛の短い、とても綺麗な顔立ちをした女の子が居た。


「あ、あの?」

「あなた、私見えるの?」

「え、うん」

「私、このトンネル大好きでね、このトンネルの良さを知ってもらいたいの」


 女の子は私の目を見ながら言った。


「だから、貴方もこのトンネルと一緒に永遠と過ごそう」


 女の子は猛スピードで私に近寄り、私の首を強く絞める。徐々に息が出来なくなり、呼吸困難に陥った時、私は無意識に叫んでいた。


「わ、私にはまだ小さい子供がいる。死ねないんだぁ……」


 すると、女の子は急に絞めていた手を離し、泣きながら私に問いをぶつけた。


「あなた子どもいるの?」

「あ、あぁ」

「子ども何歳?」

「2歳と6歳だ」

「……そうなの。閉じ込めてごめんね」


 眩い光が突如として目を襲う。

 数秒後のこと光が収まり、キョロキョロと周りを見渡すとトンネルの出口が見える。


 何が起こったのか分からず、ただただ不思議な体験をした。


 私はこのトンネルでの怪事件を、こう呼び、真夜中のラジオで聴いてくれている皆に伝えて言った。


【母親に忘れられた地縛霊の住むトンネル】と。

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