セックスレス(真夜中)
しょうわな人
第1話 まさぐる手
ああ、まただ……
また、今夜も私の体を
もう、
私は夫と結婚して二十五年になる。子供は四人。一番上の長男は去年大学を卒業して、それなりの企業に就職した。長女も今年、大学を卒業して教師になる内定を貰っている。
次女と三女はまだ学生だけれども、二人とももう手のかからない年齢になっているので、子育ては一段落ついた状態だ。
夫は高校時代の同級生で、お互いに二十五歳で結婚した。結婚してから、三十代後半までは夫には
いつからだろう? 夫が私を抱かなくなり夜中に寝ている状態でも、手だけが私の体に伸びて弄るようになったのは?
四十代前半にはそれでも月に二回はセックスをしていたと思う。
それが、いつからか夫が寝るのが早くなり、私が後からベッドに入ると、確実に寝ているにも関わらずに、手だけが私の体を弄るようになった。
私にも性欲はある。毎夜、夜中に生殺しのように、性感帯を刺激されて、
今夜もまた……
どうしても文句を言いたくなった朝、私は何とか夫と同じ時間に起きて、子供達が寝ているのを確認してから、夫に詰め寄った。
「ねえ、その気も無いなら私の体を真夜中に触らないでちょうだい」
私がそう言うと夫は少しだけ悲しそうな顔をした。
「いや、ごめん。その気が無い訳じゃないんだよ。ただ、転職して朝早く起きなきゃダメだから、夜はどうしても眠くて…… 以前に朝方に求めたら君が朝からなんてイヤだって言ったから、それから自重してるだけなんだ。ただ、無意識に君を求めて真夜中に君を触っているんだね。ごめんよ。君がイヤなら別々に寝ようか。僕は一緒に寝たいけど……」
夫から聞かされた事実に私は少し反省した。
思えば上の子二人が大学に進学する際に、当時勤めていた会社の給料ではやっていけないと夫に言って、転職してもらったのは他ならぬ私だ。そして、今の職場は朝早くから長距離を移動して現場で仕事をこなして、また長距離を運転して帰ってきている。そのお陰でそれなりの給料をもって帰ってくれているのだ。夫ももう五十歳だ。疲れない訳がない。私は夫に謝った。
「ごめんなさい。自分勝手な言い分だったわ。思えば私がもっと早くに一緒に寝ればいいだけなのよね……」
私が謝ると夫は
「いや、子供達にも手がかからなくなって、やっと君がゆっくりと過ごせるようになったんだから、好きな時間に寝たらいいんだよ。でも、寝て君がベッドに入ったら無意識に手が伸びてしまうから…… ごめん」
また謝られた。その日の夜。夫がお風呂に入ったすぐ後に私も入り、まだベッドで起きていた夫の元に向かった。そして、寝室の明かりを消してベッドに入ると、夫が
「有難う、気遣ってくれて」
そう言って私を抱いてくれた。久しぶりのセックスは互いに満足して、深い眠りにつく事が出来た。
ただ、事が終わって寝たあとにも、夫の手は私の体に伸びてきたが…… もう習慣化してるようだと思い、クスリと笑って私も寝た。
この人と一緒になって良かったと幸せに思いながら……
セックスレス(真夜中) しょうわな人 @Chou03
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます