第二十三話 戦闘
何発もの火球が俺たちの方にとんできている。
それを俺はイアと共に水魔法で迎撃していた。
「はあ!!」
敵の攻撃の合間を見計らい、俺は儀式雷魔法を放った。
俺の手から発射された雷の矢が、敵の魔法師数十名に迎撃されつつも、少なくない被害を与えた。
それを確認し、次の儀式魔法を構築しながら火球の迎撃に戻る。
これで何発目の儀式魔法だろうか。
俺が最初に神威魔法を撃ってからずっと敵の魔法師団と魔法の撃ち合いをしている。
使っている魔法は確実にこちらの方が強力だが、なにせ敵は数が多い。
百を超える人数の魔法師団の攻撃を俺とイア二人だけで防ぐのはなかなか大変だ。
故に攻撃がどうしてもおろそかになってしまう。
しかも上位以下の魔法では完全に防がれてしまうのだ。
なのでイアには防御に専念させ、俺がちょくちょく儀式魔法で攻撃していた。
魔法の撃ち合いはかなり拮抗している。
俺は全然大丈夫だが、そろそろイアの魔力切れが心配だ。
ガサッ!!
不意に背後で音がした。
思わず一瞬振り向くと、視界の端に帝国の鎧が見えた。
どうやら兵士を送り込んできたらしい。
敵の魔力も尽きてきたのだろうか。
「やっと私たちの出番ね!」
「ロエルは後ろは気にしなくていいぞ」
ラインとフレイの頼もしい声が聞こえた。
そんなに張り切っちゃって、怪我をしないといいのだが……
「元気だなあ。でも、ライン君たちに怪我されると俺が後でエルに怒られるから無理はしないでくれよ。ロエルとイアちゃんは俺が守るから困ったら遠慮なく逃げてくれ」
ダラスがそう言ってもあの二人は絶対逃げないんだろうな。
ダラスにはかわいそうだが怒られてもらおう。
魔法の迎撃に集中しているので後ろの様子は見れないが、金属がぶつかり合う音が聞こえるので戦闘が始まったらしい。
まあ俺は無事を信じて自分の役割を全うしますか。
________
しばらく戦闘は続いた。
ずっと魔法を撃ち合っているので敵は相当魔力を消耗しているのだろう。
火球の勢いが弱まってきているような気がする。
俺の魔力は未だ底が見えないので少し余裕がうまれた。
「イア、魔力はまだ大丈夫か?」
「う、うん。多分まだ何とかなると思う」
イアの方は強がってはいるが結構消耗しているようだ。
まあでも今すぐ切れるということはないだろう。
今度は後ろの様子を確認してみた。
何体もの屍兵がゾンビ映画のように押し寄せてきているが、ダラスたちがなんとか食い止めている。
ラインとフレイも特に致命傷は負っていないようだ。
「父さん、大丈夫ですか?」
「ああ、任せておけ! なんか今日の俺は絶好調なんだ!」
その言葉どおりダラスの動きは前に狩りの様子を見せてもらった時よりすさまじい。
これが子供を守る父親の力なのだろうか。
まあ師匠ほどではないけど。
だが、そうは言っても相手は屍兵。
誰か焼く人がいないとどんどん増えてしまう。
このままではそのうち決壊してしまうだろう。
う~~ん……
「イア、とりあえず火球は俺だけでなんとかするから、後ろの屍兵の残骸を燃やしてきてくれ」
「大丈夫なの?」
「なんかさっきから勢いがなくなってきてるっぽいからなんとかなるよ」
「分かった」
「あ、ちょっと待って」
俺は素早く手のひらサイズの魔石をうみだして、イアに投げ渡した。
「魔力が切れたらそれで補給してくれ」
「うん、ありがとう」
さて、これで屍兵はなんとかなるだろう。
魔法師の方はそろそろ諦めて撤退してくれないかな~
これはもしやこちらも魔力を消耗していると思われているのかもしれん。
ここらで一発でかいのかましてまだまだ余裕ですアピールでもしようか。
もう一回神威魔法でも撃てばさすがに心が折れてくれるだろう。
だが、神威魔法の構築には時間がかかる。
その間どうやって火球を防ごうか。
でかい氷壁でも作ればなんとかなるか?
よし、次に勢いが弱まった時に実行してみよう。
そして、火球の勢いが弱まってきた。
俺は早速地面から巨大な氷の壁を生やした。
そして神威魔法の構築を始める。
使う魔法は最初に撃ったやつと同じ光の矢だ。
再び火球の勢いが戻り、氷壁に次々とぶつかってくる。
だんだん氷壁にひびがはいってきた。
魔法完成まではもってくれよ。
やがて、氷壁が音を立てて砕け散った。
だが、それと同時に神威魔法の構築も完了した。
「いっけー-!!」
俺の手から巨大な光の矢が放たれた。
敵からすれば悪夢の再来だ。
しかも今度は結界がない。
一体どれほどの被害を与えるのだろうか。
これで諦めてくれるといいのだが。
だが、そううまくはいかなかった。
なんと、敵の魔法師複数人が放った魔法と光の矢が空中で衝突し、共に消滅したのである。
神威魔法を打ち消せるということは向こうも神威魔法を撃ったのだろう。
どうやら向こうも決めにきたようだ。
火球の勢いが弱まっていたのはあの魔法の構築に人員を割いていたからだろう。
ちょっと魔法の構築が遅れていたら逆にこちらがダメージを受けていた。
これはどうやらまだ敵の魔力も余裕があるようだ。
どこかに補給手段でもあるのか、それとも単に魔法師の数の暴力か、もしかしたらとんでもない魔法師でもいるのかもしれない。
まあとにかく、これは長くなりそうである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます