第十二話 魔物駆除
俺はファビットを探しに畑の中に入った。
他の村人たちも茂みをガサゴソやって探している。
なんだか、前世でやった地域の草むしりを思い出すな。
結構畑の中を探したが全然ファビットは出てこない。こんなに大勢で探しているので向こうも警戒しているのだろう。
ということで、俺は場所を変えることにした。
ファビットがいそうな場所を探して、村の中を歩く。
「おっロエル君じゃないか」
突然話しかけられて振り向くと、お使いの時によく話すパン屋のおっちゃんがこちらに手を振っていた。
「こんにちは」
「こんにちは。ロエル君もファビット退治をしてるのかい? まだ小さいのにえらいね」
「はい。まだ一匹も見つけてないんですけどね」
「まあそりゃあんな大勢で探したら警戒されちまうよな。どれ、おじさんが秘訣を教えてあげよう」
秘訣なんてあったのか。そんなものがあるならぜひ知りたいものだ。
「どういった方法なんですか?」
「なに、簡単なことだよ。餌で釣るんだ」
なるほどその手があったか。だが、警戒されてる中でひっかかってくれるだろうか。
「まさか本当にひっかかるのか疑っているな? 大丈夫だ。やつらはそんなに頭がよくない。ちょっと人気のないところにこのうちの店特性のにおい団子を置いておけばすぐに集まってくる」
おっちゃんは手のひらサイズのなにかの塊を掲げながら言った。
「へえ~そんなものがあるんですね。一つ頂いてもいいですか?」
「ああ、いいとも。ただし、一つお願いを聞いてもらってもいいかね?」
ほう、それが目当てだったか。
「内容によりますね」
「なあに、君なら簡単なことだよ。ちょっとファビットのやつに壁に穴をあけられてね。見栄えが悪いから塞いでほしいんだ」
「それくらいならいいでしょう」
俺は店内に入り、壁にあいた拳サイズの穴を土魔法で塞いだ。
「おお、さすがの魔法の腕だね。これで客に文句を言われずに済むよ。はい、約束の品だ」
俺はおっちゃんからにおい団子を受け取った。なんだかパン屋さんのにおいを強めたようなにおいがする。
「ありがとうございます」
「ファビット退治、がんばってね」
俺はパン屋を後にした。
さて、どこに団子を仕掛けようか。
俺は人気のないところをさがしてうろうろした。
あの辺とかいいかもしれない。
俺は住居と住居の隙間にある細い道に入った。
そして、道の端っこに団子を置いたあと、俺は住居の塀によってできた物陰に行き、足元に隠ぺいの魔法陣を描いて隠れた。
息をひそめること約十分、ファビットが団子をつつき始めた。
俺は動かずに土魔法で地面を隆起させてファビットを囲った。
捕獲成功だ。
近づいてみると、中でキュッキュいってるのが聞こえる。
なんか可哀そうだな。でも害獣をかわいいからといって放置するわけにはいかないんだ。せめて一撃で……
俺は雷魔法を使おうとしてふと思いとどまる。
こいつ逃がして追いかけたら隠れ家見つけて一網打尽にできるんじゃね?
ついさっき可哀そうだと思ったとは思えない発想だ。我ながらちょっと引く。
だが、それが成功すればはるかに効率がいい。
ということで、俺はそれを実行することにした。
まず、見失わないようにファビットの体に光を召喚する魔法陣を描きこみ、魔石も括り付けて光らせた。
そして俺はファビットを逃がした。
道案内、頼んだぞ。
俺は発光するファビットを追いかけた。
途中何度もファビットが住居内に入ったりして大変だったが、そのたびに光を見つけなおして追いかけた。
その成果もあって、ついに隠れ家と思われる一つの建物にたどり着いた。
それは、公衆トイレくらいのサイズの小屋だった。
おそらく元木こりかなんかの道具入れだったのだろう。
だが、今は誰にも使われていないらしく、朽ち果てていた。
俺は逃がさないように小屋の周りを土魔法で作った壁で囲い、小屋に近づいた。
穴だらけの壊れそうな扉に手をつけて優しく押す。
扉はききいっと音を立てながらゆっくりと開いた。
中を覗き込むと、やはりここが隠れ家になっていたようでたくさんの大小さまざまなファビットがいた。
大きなファビットたちが小さなファビットを守るように前に陣取り、歯を見せて威嚇している。
まるで親が子供を守っているようだ。
そうだよな……こいつらにも家族はあるよな。
はあ、害獣駆除って辛いね。でも、こいつらを放置すると俺たちの食糧がなくなるんだよな。
世は残酷なり。せめて苦しまずに死んでくれ。
俺は光と聖を付与した雷魔法を使った。
俺の手から放たれた電撃は、先頭にいたファビットを瞬殺した後、連鎖するように次々と後列のファビットを撃ち抜き、先頭の後を追わせた。
小屋の中にいたファビットは全滅した。
確か死体は持ってこいって話だったよな。
最初の説明で、死体は集めてミンチにした後、家畜のえさにすると言っていた。
俺は氷魔法で先ほど駆逐したファビットの死体を凍らせた。
さて、何匹倒したのかな。
数えてみると、合計四十五匹だった。そのうち四十匹は小さな子供だ。まあでも、サイズについては何も言ってなかったし、これで小銀貨四枚獲得だ。
倒してすぐ考えることが金とは、本当にさっきまで可哀そうだと思ってたのが噓みたいだな!
俺は自分で自分につっこんだ。
一人はさみしいぜ。
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