第三話 VS剣聖
「ホルザーク家の名において、決闘を申し込む!」
…え?
なんか急に名乗り始めたんだが。
てか剣聖って言った?
しかもラーラスの剣?
なんかすごい肩書もってるやん。
当然、俺は名乗ってる最中に攻撃を止めるような空気の読める人間ではない。だから名乗ってる最中も当然の権利のごとく魔法連射をつづけた。
だが、いくら石弾がヒットしても全然傷をつけられないのだ。目などの急所に当たりそうなものは木刀の最小限の動きで防がれてしまう。
なんらかの防御魔法でも使っているのだろうか。
とにかくこれでは埒が明かない。
もっと強力な魔法で決めなければ。
俺は連射を止めた。
そして俺も名乗りをあげる。
「俺はロクスウェルだ」
しゃべりながら儀式魔法を構築する。
「その申し出、受けさせてもらう!」
ヴォー---ン
話し終えると同時に儀式雷魔法を放った。
光属性と聖属性を付与した瞬間火力特化だ。
俺の手から放たれた極太の光線がアレクシアに向かう。
そしてそのまま焼き焦がすと思われた。が、
ザンッ
アレクシアが木刀を振りかぶった。
すると、木刀から斬撃が飛ばされる。
斬撃は光線を切り裂きながら俺の方へ進んできた。
(なっ! 魔法が切られた!?)
俺は横に跳んで斬撃を回避する。
アレクシアの方を見ると木刀を構えて腰を落としているのが見えた。
まずいっ!
直感的にそう感じた時には目の前にアレクシアがいた。
俺はとっさに自分の真横を爆破して自分を吹っ飛ばし、距離を取ろうとするが、すぐに追いつかれてしまう。
(くそ! こうなったら……!)
俺は速度バフをかけた。
俺のスピードが数倍に増加する。
さらに、土を巻き上げて、姿を眩ました。
土煙はアレクシアの木刀の一閃によって一瞬で払われてしまう。
だが、アレクシアの目の前にすでに俺はいない。
俺はジャンプしてアレクシアの真上にいた。
「はあ~~!」
俺は右手を前に突き出し、熱線を放った。
しかし、惜しいところで反応されてしまった。
アレクシアは木刀を頭上で高速回転させて熱線を防いだ。
だが、防がれることなど想定済み。
俺は左手であることをしていた。
突如、アレクシアの後方で竜巻が発生する。
その中心には大量に魔力を込められて今にも爆発しそうな臨界状態の木刀があった。
ズガ――――ン!!!
ついに木刀が爆発した。
だが、周囲に被害はない。
爆発のエネルギーは竜巻によって操作され、全てがアレクシアに向かっていた。
さて、試合開始前にあんだけ魔力を込めたのだ。さすがのアレクシアもこれは無視できないだろう。
だが、対応した瞬間俺の熱線で焼かれることになる。
どうする?アレクシア!
「ははは、まさか僕をここまで追い込むとは……
これは将来が楽しみだ。
でも、今回は相手が悪かったね」
その時、アレクシアが何かをした。
アレクシアを中心に、何かが放出される。
そして、現在放たれている全ての魔法がかき消された。
いや、消されたというより、魔力をかき乱されて形を保っていられなくなり、霧散した感じだ。
熱線も竜巻も爆発もなかったことにされてしまう。
(なんだよ……それ。
チートじゃねー-か)
俺が心の中で悪態をついた直後、いきなり頭を強い衝撃が襲った。
そのまま俺は意識を手放した。
______
《アレクシア視点》
少年が何やら詠唱を始めた。
詠唱が進むにつれ、彼の木刀が光っている。
木刀になにか魔法をつかっているのだろう。
魔道具でもない道具に魔法を使う奴は初めて見た。
何が起こるんだろう。
僕は好奇心に駆られて、見守ることにした。
しばらくして、詠唱が終わったらしく、彼は試合開始の許可をだした。
「開始!」
ラインの声で試合が始まる。
さて、何が起こる?
僕は彼の木刀に注目した。
彼が木刀を上に掲げる。
だが、次はちょっと驚く行動をした。
木刀を捨てたのだ。
木刀に注目していた僕の目は思わずそれを追ってしまう。
そして、彼を視界から外してしまった。
気づいた時にはもう遅かった。
僕は腰のあたりまで凍らされてしまっていた。
身動きがとれない。
そして、僕の目の前には大量の石弾が迫っていた。
(やられた!)
僕は石弾を木刀で弾きながら思った。
あの木刀はブラフだったのだ。
本命から目をそらさせるための。
そしてこの魔法、彼が詠唱をしたようには見えなかった。しかも現在進行形で詠唱せずに魔法を撃ち続けている。
詠唱なしで魔法をつかう魔法師など見たことない。
だが、彼は木刀に魔法をつかうようなこともしているのだ。彼の魔法はきっと特殊なのだろう。
それに、魔獣は詠唱せずに魔法をつかっている。つまり、不可能ではないのだ。
となると不自然なのが試合開始前の詠唱だ。
彼が無詠唱で魔法を使えるならばあれは何の意味が?
……そうか、僕に無詠唱で魔法を使えることを悟らせないためか。
そういえば彼はラインが木刀をもってくる最中、わざわざ僕に詠唱して魔法を使うところを見せてきた。思えばあれもそういう意味があるのだろう。
そのときから本命を隠そうと努めていたのだ。
僕の手合わせの誘いを受けたその時から、彼にとって戦いは始まっていたのだ。
正直子供とは思えないね。
しかも魔法の威力もすさまじい。
一発一発が中位魔法級の魔法を連射している。
まるで魔法師の軍と戦っているようだ。
間違いなく実力は王宮魔法師を遥かに凌駕している。
”賢者”にも匹敵するかもしれない。
僕は彼の認識を改めた。
だから僕は、名乗りを上げて、決闘を申し込んだ。
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