第44話 お菓子検査

「さぁ~て! お前ら、カバンの中身見せろ~♪」


 次の目的地であるいろどり中央公園に到着した名桜なざくら高校一行。だが、バスを降りた俺たちA組を待ち構えていたのは、担任の三科によるお菓子検査だった。


「なんで俺らだけ検査なの?」(高江洲)


「下級生やB組は?」(川岡)


「他の組はいい。大体ルール破るのはお前らだけだからな」(三科)


「いいがかりピョン!」(うさ美)


「先生、公平性は大切だと思います!」(奥平)


「それはこの検査を無事パスしてから言うことだな」(三科)


 クラスメイト達からクレームが入るが、三科はニヤニヤとどこか嬉しそう。徹底的に調べ上げてやるという、教師特有の悪い笑みだ。


「相変わらず暴君ピョン。そんなんだから、彼氏の一人もいないピョン」(三科)


「あ? うさ美、テメー今なんか言ったか?」(三科)


「い、いいえ! なんでもないピョン」(うさ美)


「どうでもいいから、さっさと済ませてくださいよ」(俺)


「わーってるよ。菜乃ちゃん、カモーン」(三科)


 結原先生も駆けつけ、三科&結原教諭によるお菓子検査が始まった……のだが、三科の表情にだんだんと曇りが見え始める。それもこれも、クラスで優秀なあの男による解説のせいだ。


「おい小枝、お前これはどこで買った?」(三科)


「これはですねぇ~、えっと」(小枝)


「ああ、ぴよちゃんのお菓子はDDドラッグで購入したものですね。ドラッグストア、業務スーパー、ディスカウントショップ、学校そばの駄菓子屋など、いくつか価格を比較して、この店が一番安価でした。ちなみにレシートもあるので、金額はこれで確認してください」(南田)


 南田が教諭たちのそばで、作成していた価格比較表を基に説明していく。

 実のところ、お菓子をシェアする前提として、最適解のラインナップを南田が提示していたのだ。俺たちは事前にその情報を共有し、指示があった各々の350円分を購入した。ポテチ各種にせんべい、キャラメル、おいしい棒、チョコ、クッキー、ラムネ、ビッグかつ、ヤングドーナツと申し分のないメンツ。

 買い物もスムーズ、いろんなジャンルのお菓子を楽しめ、さらに三科の野望も砕けるという、まさに一石三鳥の策というわけなのだ。


「お前ら……そこまでするか」(三科)


 珍しく三科はがっくりと肩を落とす。


「食べ物の恨みは怖いですからね。三科先生、ここは負けを認めましょう」(結原)


「勝ったと思うな! I shall return」(三科)

※私は必ず戻ってくる


「いつでも受けて立ちますよ」(南田)


 こうして、以前、一悶着あったお菓子問題もスムーズに決着へと運んでいった。だが、この次に来るトラブルはさすがの俺も予想できずにいた。

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