僕の片想い

朝焼 雅

 午前0時を過ぎた頃、僕は望遠鏡を担いで星のよく見える公園へ来ていた。

 これは、僕が片想いしていた先輩とのお話。


 中学校へ入学してから1ヶ月が過ぎようとしていた時、どの部活へ入ろうか決められず、周りの人がどんどん部活を始めていく中、1人孤立していた。

 僕はスポーツに興味があまりないため運動部は避けていた。文化部もある程度見学し、これと言っていいとこがなく、ため息吐きながら廊下からグラウンドを眺めていると話しかけてくる女性の声がした。

 振り返ると芸能人かってくらい綺麗な女性が立っていた。

 あまりにも綺麗な女性だったため、見惚れて固まっていると―――

「ねえ、大丈夫?」 

 僕は、ハッと目を覚まし、「だ、大丈夫、です」とだけ言った。

 彼女から話を聞くと、彼女は1つ上の先輩で部活の勧誘にきたらしい。

「天文部?って何ですか」 

ボケっとした顔で答えた。

「みんなで星を眺めるの、興味ない?」

「特にありません」

「そう、もしよかったら体験だけでも来てね」

彼女はそういうと、そのまま帰ってしまった。


 特にやることもないし部活には入らないといけないしとめんどくさがっていた時に誘われたもんだから少し気になって次の日天文部へ顔を出すことにした。

 次の日の放課後、早速天文部へ行こうと思ったんだが、どこで活動しているのか分からず、学校を彷徨っていると、廊下の窓から外を眺めている先輩を見つけ、あまりにも絵になるから見惚れてしまった。

 先輩がこちらに気が付き近寄ってくる。

「こんなとこでどうしたの?」

「実は天文部へ見学に行こうとしていたんですけど、場所がわからなくて」

「そうなんだ、来てくれてありがとう、でも天文部の使える教室はないの」

「え?」

「私が勝手に作った部活というか、サークルみたいなもので、色んな人に声をかけたんだけど、来てくれたのは君だけで……」

 先輩の寂しそうな顔を見て少し胸が痛くなった。


「私ね、お父さんが天体観測が好きで近所の公園によく連れて行ってもらって、それから星を見るのが好きになったの、だからもっと他の人にも星をみて好きになってくれたらなって」

「僕、天文部入部したいです」

先輩の表情を見て、先輩の寂しそうな声を聞いて思わず、彼女のそばにいてあげたいと思ってしまった。


 これがきっかけで僕たち2人だけの天文部が始まった。と言っても中学生の僕たちじゃ行けるとこが学校近くの公園しかなかったし夜遅くは遠出は出来ないんだが、幸いお互い学校から家が近かったためなんとかなった。

 ただ、夜中にこっそり家を抜け出すのはハラハラドキドキしたし、先輩と合流してからも警察に歩道されないかとか先輩と2人きりで緊張したり、色んな意味で大変だった。

 先輩の望遠鏡を借りて星を見て先輩と話す。それだけだったけど、なぜか充実している気がして楽しかった。

 こんな生活をほぼ毎週、高校へ入ってからもしていた。中学を卒業する頃には先輩のことが好きで追っかけるように同じ高校へ行った。

 僕はいつまでもこの日常が続けばいいと思っていた。高校にも慣れ始めたある日、先輩といつものように星を眺めていると先輩が真面目な顔をして話しかけてきた。

「後輩くんは星を好きになった?」

「おかげさまで好きになりましたよ」

「そう、私も好き、ずっと見ていたい」

いつもと雰囲気が違って違和感を感じた。

「どうかしたんですか?」

「ううん、なんでもないの」

その後に先輩はボソッと何かを言っていたみたいだけど僕には聞こえなかった。

「今日も綺麗でしたね!」

「そうだね」

少し悲しそうに聞こえたがこの時の僕は浮かれてて気づかなかった。


 テスト週間で先輩とは会えなかったがテストも終わり、いつものように公園へ行くが、その日先輩が来ることはなかった。

風邪でも引いたのかなと思って帰り、次の日学校で先輩を探してみたけど先輩を見つけられず、しょうがないかと家へ帰ろうとした時、僕のスマホが鳴り出ると先輩だった。

「ごめんね」

それだけ言うと電話が切れた。

言っている意味がわからず掛け直すが留守電になっていた。

 突然のことでよくわからなかった僕は、先生に先輩がどうしているのか聞いたら、病気になって入院したと言っていた。

 先生に病院の場所を聞き、病院まで走った。


 病室へ入るとベッドで俯く先輩の姿があった。

「入院したなんて知りませんでした」

「高校入ってからね、体調が良くないことが多くて検査してもらったら手術が必要な病気なんだってさ」

「難しい手術なんですか?」

「少し厄介なとこにあるらしくてね、成功しても後遺症が残るかもしれないって」

「そう、なんですね、あの、僕、毎日病院来ます」

「どうしてそこまでしてくれるの?」

「そ、それは……それは……」

先輩を好きだと伝えたい気持ちを抑える。

「ありがとう、後輩くんはいつも優しいものね」


 僕は学校が終わると毎日先輩の元へ行き、いつものように星の話をしたりして先輩に気を遣わせないようにした。

 そして、先輩の手術の日。僕は学校を休んで先輩の元へ来た。

 先輩は、「いってくるね!」それだけ言って手術室へ入っていった。



 それから7年が経過し、今日は星を見ようと公園へ来ていた。時刻は午前0時を過ぎ。

「今日も綺麗だ」

「……そうだね」

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僕の片想い 朝焼 雅 @asayake-masa

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