真夜中は本当に真夜中になった。
はちこ
第1話
SDGs(持続可能な開発目標)は2015年9月、国連で採択された。2016年から2030年の15年間で17ある目標を達成するというもの。その7番目の目標は”エネルギーをみんなに そしてクリーンに”と謳われている。それには「すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーのアクセスを確保する。」という説明がある。持続可能なエネルギー、実現出来れば夢のような話だ。でも、実際にはどうだろう。本当にそんなことが実現出来るのだろうか?
202X年、日本はSDGsの期限を目前にして、7番目の目標達成には程遠い現状を受け、実験的にある取り組みを行うことにした。日の入りとともに、医療機関、警察、消防を除く、すべての社会活動を停止するというものだ。そもそも日本はエネルギーを無駄に使い過ぎている。持続可能なエネルギーを開発する前に、もっと出来ることがあるのではないか。つまり、エネルギーの使用量をどこまで減らせるのか、そして、減らすことでどういった効果があるのかを確かめることにしたのだ。特に、日本は明るい。昼夜を問わず明るい。コンビニ、店舗の看板。明るくする必要があるのか?また、人々の便利さを追求しすぎたあまりに、稼働をやめない工場、止まらない物流、夜通し走るトラック。もしも、人々が日の入りとともに社会活動を止めたら、どれだけのエネルギー使用量を減らすことが出来るのか?
取り組み期間中、日本における社会生活は日の出、日の入りの時刻を基に定められた時間内で行う。日の入りとともに社会生活は終わらせる。大人も子どもも帰宅して、夕飯を食べ、お風呂に入り、寝る準備までを日の入りまでに終わらせる。日中、太陽光パネルや風力発電といった自然エネルギーで得られた電力を自宅内でのみ使用可能という特別ルールも設けられた。
真夜中は本当に真夜中になった。
この取り組みを始めて数か月。真夜中が本当に真っ暗な真夜中になった後、人々にどんな変化が訪れただろうか。
子どもは大人と過ごせる時間が増え、笑顔が増えた。逆も同じだ。長時間労働から解放され、人々は心身ともに健康になった。昼夜を問わず光にさらされる生活から解放されると、体内のリズムも自然と整う。ストレスが減り、怒りもなくなり、争いが減った。自動車が夜間に走らなくなったおかげで、ガソリンの使用量は半分どころか、3分の1に減り、二酸化炭素の排出量も同じように減少している。人間の社会活動が減ることで、エネルギー使用量は目に見えて減少し、それ以外にも多くの効果が表れた。
この本当の真夜中が明けたら、明日には明るい未来が待っている。
真夜中は本当に真夜中になった。 はちこ @8-co
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