第67話
冒険者ギルドへと着き、サシャの案内で二階へと通される。
ギルドの二階はギルドマスターの執務室と応接室になっていて、基本的に俺のような一冒険者が立ち入ることは余りない。それこそ『戦乙女』のダンジョン攻略の様な大きな手柄でもたてれば呼ばれたりはするだろうが。
後はこういった個人指名の依頼ぐらいか。
因みにギルドからの依頼は国や貴族からの依頼と違って、どちらかと言えば”お願い”に近い。だから一応断ることもできる。
まあ、その分どうにも断りづらい案件であることが多いんだが。
サシャは応接室の看板のある部屋の前で立ち止まり扉をノックをする。
「タラレスさん。サシャです、グレイさんをお連れしました」
すると直ぐに中から
「入りたまえ」
と声がした。
「失礼します」
「やあグレイ。突然呼び出してすまないね。サシャ君もご苦労様」
サシャが扉を開けると、小柄で白髪混じりの青髪の男……ギルドマスターのタラレスがソファに腰掛けていた。
「いえ」
タラレスの言葉にサシャは一言だけそう返す。
「名指しの依頼と聞いてな。詳細を聞きに来た」
「うん。まあ、座ってくれ。お茶を入れよう。丁度良い茶葉が手に入ったんだ、ちょっと待っててくれ」
そう言うとタラレスはいそいそと立ち上がり、隣の部屋へと歩いていった。
「……」
タラレス自身が茶をいれるのか。
「お客さんに紅茶を振る舞うのはタラレスさんの趣味ですから」
俺の考えを読みとったのかサシャがそう言った。
「…成る程」
タラレスはあまり執務室から出てこないので、このギルドに出入りしてる冒険者でも顔を知っている奴は少ない。
俺自身も、直接顔を合わせたことは数えるほどしかない。
実力は相当なもので、現役時代は二つ名持ちの有名な冒険者だったらしい。ハルサリア情報だが。
ソファに座って待っているとガチャリと扉が開く。
「やあお待たせ。丁度もう一人も来たようだ」
もう一人? そう思い扉の方を見ると、ティーセットとクッキーをのせたトレイを持ったタラレスの後ろから、長い金髪を後ろでアップにした剣士エミリアが続いて入ってきた。
どういうことだ?
「うん、ちゃんと説明するからそう怖い顔しないでくれ」
……素の顔なんだが?
「いや、あれは……」
エミリアはそれがわかってるのか、タラレスの言葉に困った表情を見せる。一瞬訂正しようとしたが、俺が溜め息をついて首を横に振るのを見てそれを諦めた。
取り敢えずさっさと話を進めたい。
依頼の内容は概ねサシャから聞いていた通り。バストーク近隣の町や村で暮らしていた子供達が連続して行方不明になっている。
気になって聞いてみたが、この
…これが誘拐だとして、何故このバストークより明らかに人口の少ない場所をターゲットにしているのか。考えられる理由としては。
単純にそちらの方がやりやすい。
探しものがそういった所にいる可能性が高い。
冒険者ギルドや領主に知られるのを少しでも遅らせる為。
ただ単にまだこの街に手をだしていないだけ。
この辺りか。
それから話を聞いてみると、どうやら元々は『戦乙女』へと依頼を出すつもりだったらしい。だがタイミング悪く、とある豪商からその『戦乙女』へと指名依頼がきたそうだ。
その豪商の名はマクシム・フィロー。この国で3本の指に入る程大きな商会のトップだ。
そういえばコダールの孤児院の……。
「……」
「大丈夫かグレイ?」
名前を呼ばれて顔を上げると心配そうな顔をしたエミリアと目が合った。
「…すまん、考えごとをしていた。それで、今回の依頼は…」
「ああ。フィロー商会の依頼は王都までの商隊の護衛。そっちをカーシャ達に任せてこっちを私が請け負うつもりだ」
「成る程。俺はその手伝いか」
それは別に構わないが…。
「その商隊の護衛の方はリーダーのお前が居なくて大丈夫なのか?」
「依頼はちゃんと請け負う。それにカーシャとハルが居れば万が一はない。もしこれが貴族からの依頼だとそうもいかないがな…」
エミリアは少し面倒くさそうな表情でそう言った。
貴族は面子に拘るからな。自分の出した依頼をリーダー不在で受けるというだけで憤る奴もいるらしいしな。…まあ、正直その辺りは実家が貴族のエミリアだからこそ分かることもあるのだろう。
「……それじゃあこの依頼。受けてもらえるのかな?」
俺とエミリアの対面に座っているタラレスがそう言った。
「ああ。私はさっき言った通りだ」
「俺も受ける」
俺達がそう答えるとタラレスは満足そうな顔で頷いた。
――――――――――
前々回のコメントで大半の人達が挙手してて笑う。まあ……転生要素が息をしてませんからね(わかってます)
キャラクター説明の更新も明日ぐらいに行います。
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