第9話
この世界にもマジックバッグというものはある。とても便利な物ではあるが、値段の関係で持っている奴は少ない。
冒険者必須アイテム! みたいな売り文句なのに、普通の冒険者じゃ手がだせないってどういうことだ。
俺は昔パーティを組んでた時に買ったから持っている。そのお陰でこうしてエルダーオークの玉×2と首を手で持ち歩かなくて済む。
が…今更だが鞄に玉と首ってのもかなり嫌だな…。
因みに
だからこの世界に『Sランクパーティから追放される
マジックバッグがあるんだからアイテムボックスもあるだろって? そういうスキルを持ってる奴が居るって話は聞いたことあるが、実際に会ったことはない。
バストークへ戻る前に依頼をした村へと立ち寄る。 実はこんなことする必要はなく、ギルドへ報告すれば、ギルドから依頼者へと依頼達成の知らせが届くようにはなっているが…ま、アフターフォローぐらいあってもいいだろ。
村で依頼達成の報告をして、証拠としてエルダーオークの首を出したら、集まってきた村人達から感謝の言葉と共に早くしまってくれとお願いされた。
何故だ。
帰ろうとするとマリナが
「今日も泊まっていきませんか? その…私が夜ご飯作りますから…」
と言ってきたが、イスカ達に渡した食料は鮮度のことも考えて3日分ぐらいしかない。
気持ちは嬉しいが、ニナやラッツがお腹を空かせるかもしれないと考えると……。
「いや、気持ちだけ受け取っておく。 俺は早く帰らなければならない理由がある」
ニナの人形も修繕しなければならないし。
アリアメルが言うにはとても大切にしていたものらしいからな、直したら喜んでくれるかもしれない。
「そうですか…」
とても残念そうにするマリナ。
こういう時に湧く謎の罪悪感って何なんだろうな。
「…まあ、また何かあったら言え。 魔物や盗賊を相手にすることしかできないが」
でもこれじゃ冒険者というより傭兵みたいだな…。
冒険者と傭兵は結構違う。 冒険者ギルドの発行する冒険者カードは身分証明として色々な国で使える。
その分冒険者は各国の定める法以外に冒険者法によって制約を受ける、例えば依頼者がギルドへ提示した報酬以外の物(追加の金や宝石等)を依頼者へ要求することは禁止されている。だから今回のマリナの件も冒険者の方から要求してきた場合はアウトだ。
法を犯せば罰金や冒険者資格の停止や剥奪もある。当然冒険者カードはその効力も失われる。
傭兵にはそれがない。基本は依頼主とそれを受ける個人の問題になる。が、それ故に傭兵は冒険者以上に信用が重要になる。
意外と夢がない?
どんなものにも責任ってのは付いてくるもんだし、要はそれさえ守れば後は自由にしていい訳だから俺としては気楽なものだがな。
そもそも日本に比べたら法なんてガバガバで、あって無いようなものだし。
村人達から見送られながら村をでる。
一人、また一人と家へ戻っていく中、マリナはずっと村の出入口で俺に手を振っていた。
帰りの馬車の中で俺はある計画を立てていた。
それは……夢のマイホーム計画!
バストークで暮らし始めてもう結構経つし、いい加減に腰を落ち着けようかと思っていた。
喜べエルダーオーク! お前の玉がその資金になるのだ!
……なんかこれ俺が素直に喜べないな…。
――――――――――
イスカ達やマリナが本来辿る予定だった未来の話(グレイが関わらなかった世界)を、近い内に閑話で入れようか考えています。
ただちょっと内容が内容なんで……
メインキャラが酷い目にあう話は嫌! って人には厳しいかも。
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