班割
※この話は著者の体験をもとにかなり穏やかになるよう編集を加えています。
「あれとって。」
「いいよ、はい。」
「察しろよ(小声)」
…すべては私の言われたこの一言から始まった。
その日は実習の途中から体調を崩し頭痛で少しボーっとしてしまっていたので何度か頼まれてから返事に一瞬ラグがあったり、先生の指示した物の類似品を間違えて取り出してしまったりとミスをいくつか多発させてしまっていた。そんな中言われた一言。すべてはそこから始まった。
「あれとって。」
そう言われたときに私は先生の指示した小さいボウルのことだと思いすぐに調理台からボウルを取り出し、渡した。
「はい。」
手渡して私が別の作業を始めたとき、
「察しろよ。」
と、舌打ち付きの小声で言われた。別に先生の指示があってから誰も出していなかったわけでもない、デモンストレーションが終わり、解散した直後だった。
小声でこちらに聞こえないように隣にいたその人の友人に愚痴っていたようだが、こちらにもしっかりと聞こえていた。なぜ言われたのか、その時は一切理解できなかった。
その次の日の実習でも、何かにつけて些細な事でも「早くやれよ」とか、「現場じゃ通用しねぇよ」など、小声で回数を重ねるごとに聞こえるように言い始めた。
4人班の中で2人にそう小声で言われ続けて、2週間くらいたったある日の深夜、もう一人の班の中で私含め班員全員と仲のいい子から電話が来た。
「ごめん、深夜に電話して、その、謝りたくて電話したんだけど。」
そう言って謝罪をしてから話し始めた。
彼は、その二人とも仲がいいので、直接伝えられないからという断りを入れてから彼らの私に対する言動の理由を話していてそれを聞かされたはいいが、私に悪いと思いながらも班員全員と友達なのでどうすることもできなかったから、理由だけでも伝えたい、と。
その理由を聞いて私は頭が真っ白になった。
『顔がオタクっぽくてきもいから、オタクはいじめてもいい。』
聞いたとき訳が分からなかった。訳が分からなくて思わず笑ってしまった、人間…いや私だけなのかもしれないが、馬鹿馬鹿しくなると笑いしか出てこなくなってしまうのだなと。
彼に「話してくれてありがとう。」とだけお礼を言い電話を切った。
もちろん発言者本人の言葉ではないので信用にかけるが、これが本当だとして発言者は何を思って発言したのか、何故そういわれるのか、考えれば考えるほど頭の中には答えの出ない疑問が増えていく。そしてふと気が付くと朝になっていた。
今日も朝から実習がある。私は、着替えて学校に向かうため、起き上がった。
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