金曜日のレモネード(リクエスト作品)
※この物語はフィクションでいかなる人物や事件とも関係ありません。
金曜日の昼下がり、今日はとても幸せな日なのよ。なぜか…ですって?決まっているじゃない。ついに私の最愛の人が振り向いてくれたの!何回も何回も彼を追ってアプローチしてようやく実ったのよ!朝から彼の家に行って私のおうちに連れてきたの。彼は疲れちゃったのか寝てるけど、今日は夕方に海に行って、週末は遠くにお出かけするの!仕事だって、今まで彼はお仕事でいろんなところに行ってて忙しかったけどもうお仕事もいかなくていいの!いつもお仕事の帰りに待ち伏せしている女たちなんてもう気にしなくていいし、これからは二人だけの時間を歩んでいくのよ!
そう言いながら自家製のレモネードをコップに注ぎ、ちびちび飲み始めた。
彼とこの時間帯で気に入っている番組を見ようと思い、彼女はリモコンを操作し、テレビを付けた。
あ!ほら、いまテレビの報道であなたのことをやっているわ!画面越しでもかっこいい…。
…でも変ね、この時間は報道なんてやっていないのに。それだけ彼は魅力的なのね!
彼女がそんなことを思っているとインターホンが鳴る。
「どちら様ですかー?」
「すいません警察です、少年俳優の子が失踪する事件が発生していまして、個人情報なので名前は明かせないのですが、最近このあたりでテレビの撮影をした後に連絡がつかないそうなんです。何か見かけた、とか心当たりが、とかございませんか?」
彼女は困ったような顔をして、
「そうなんですか…それは大変ですね…あ、でも昨日の夜自宅に入っていくのは見ましたよ。」
そういうと、警察は一瞬驚いた顔をしたが、
「本当ですか!?ご協力感謝いたします!」
そう言い残して走って去っていった。
もう、彼との幸せな時間を邪魔するなんて、迷惑な方だわ、そんなに騒ぎになっているなんて知らなかったわ。彼は、私との時間のためにここにいるのに。
あ!起きたのね!もう、そんな濁った眼で虚空を見つめてないで、私をちゃーんと見て頂戴?
うん!もう、かわいいんだから!
あ、そろそろ時間ね!車に乗って海を見に行きましょ!もうこのお家には帰ってこないけど、私たちはこれから、どこに行っても一緒なんだから!さぁ、行きましょ。
彼にそう話しかけると彼女はコップに残っていたレモネードを一気にあおり重い腰を持ち上げ、車まで足を運び、最後に頭を抱えた。
鍵を閉めてそれを共同のごみ箱に入れ、鼻歌を歌いながら彼の腕を組んで車に乗り込んだ。
そして、二人っきりの終末のドライブは始まる。
彼女の発言をあてにした警察側は、二つ県を挟んだ俳優の自宅に向かった。が、当然彼はいない。それどころか隣に住んでいる住人からその次の日の朝、女の人と喋っていたという証言が出てきて、ある一つの疑問が浮かんだ。
何故証言してくれた女性は県を跨いだ彼の自宅に彼が入ったのを見たのか。
それを確かめるべく、警察は彼女の自宅へ急行した、しかし既に彼女はそこにおらず、部屋に合いカギを使い侵入するとそこには壁一面に俳優の彼の写真が、しかも8割は公式の写真ではないうえに大方は目線がカメラを向いていない。
警察は何かを察し、捜索網を敷いたがすでに遅く、彼女たちの行方を知っているものは誰もいない。
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