主人公と全然関係のない敵対勢力同士のバトルとか好きな人用の小説
べにばな ぶたお
学校へ行こう!😄
🏫 皆勤賞
最初は犬だったよ。近所でも有名な狂犬でさ、飼い主のところから脱走してきたんでないかな。
その日は小学校登校の初日でね、学校ってのはずいぶん恐ろしいところだと思ったよ。
運の悪いことに、通行があまりない道で出会ったもんだから誰も助けてくれない。
でも学校に行かないって考えは俺にはなかった。
俺は幼稚園を一回も休まずに通い続け、皆勤賞の賞状もらったんだ。
賞状は画用紙で作られた、先生お手製の折り紙とかはっつけてあるしょぼいのだったけど、俺にとっては宝物だった。
なにせ人に褒められることがなかったもんだから。
面白いことをいうわけでもなく、かけっこが得意なわけでもなく、愛想がいいわけでもない、
ただ暗くて目つきが悪くてちょっとずるい、嫌なガキだったと思うよ。
だもんで、休まず通うっていうのは、俺にとって特別な意味をもったものだったんだ。いじましいだろ?
それに元々俺が一番腹の立つことは、自分がやろうとしていることを邪魔されることだったんだ。
学校に通うことは正しいことだろ?なぜ邪魔されなきゃいけないんだ?
だから恐怖心以上に、その犬に対して怒りの感情を抱いたね。とにかく絶対遅刻せずに登校してやろうと思ったわけさ。
まあでも相手は獣だし、喧嘩して勝てるわけもない。
とにかく逃げ切るしかないってことで、死に物狂いで学校まで走ったね。
ただ走るだけだとすぐに追いつかれるだろうから、建物づたいだったりよそんちの庭に侵入したり。道無き道をね。
それでその日はなんとか遅刻もせずに登校できたんだけど、それから毎日犬は俺の通学を邪魔するようになった。
執念深いんだ。今思うと飼い主は何をしてたんだろうね?
不思議なのは、休日にそこを通っても現れない、帰り道にも出てこない。
必ず、登校の時だけ出てくるんだ。
最初は学校に行くのが憂鬱で仕方なかったし、親にも先生にも相談できなかった。
なんだか怒られるような気がしてね。
でも人間、慣れるね。
逃走ルートの選択肢も増えてきたし、石とか投げてある程度応戦できるようになってきた。
犬がかわいそうだって?バカ言うなよ、命がけだぜ。
そんで2年生になったあたりかな、犬を殺したのは。
川に落とした後で、上からでかい石をぶつけてやったんだ。
犬がかわいそうだって?いいや、最高にスカッとしたよ。邪魔だったからね。
それに、こっちだって結構怪我したんだぜ?
今思えば、怪我について親はなにも言わなかったな、喧嘩でもしたと思ってたんだろうか。
どっちにしても無責任な話だよね。
で、まあ犬はいなくなったんで、これからは心置きなく登校できると思ったんだ。
晴れ晴れした気持ちで登校して、寝て起きて、元気よく登校してたら、またなんか、いる。
犬っぽいけどちょっと違う、なんか体がでかくてフゴフゴ言ってる。
あ、これイノシシだ。
イノシシだよ、イノシシ!
そこそこ都会に住んでると思ってたけど、どうやら生ごみとかを漁りに、山から降りてきてるみたいだ。
とびきりサイズの元気のいいイノシシだからね、逃げるのに苦労したよ。
今思えば、罠とかはればイチコロだったんじゃないかな。なんせ出てくる場所は決まってんだから。
イノシシなんて出て、周りの人は騒がなかったのかって?それが全く静かなもんだよ。
みんな眠いのかな、気が急いてるのかな。誰も助けてくれないし、それどころか見向きもしないんだよ。
ちょいと避けてそのまま通学通勤しちゃう。朝はみんな、心に余裕がないんだね!
そんなわけで俺は幼心に悟ったね、これは自分で何とかしなくちゃならない種類の問題だって。
まあ、そいつをぶっ殺すのには2年かかった。仕留めた時の達成感ったらなかったよ。
で、イノシシを倒したんだけど、俺の心は晴れなかった。次はもっととんでもないものが、俺の通学を邪魔するんじゃないかと思ったからさ。
なにせ、俺にとって通学イコール死闘だからね。今更平和に登校を終えられる気が全くしなかった。
で、予想は予想以上に当たっちゃったわけ。
次の日登校してるとね、いつもイノシシが出てきたあたりに、髪の長い女がいた。
綺麗な人だったんだけど、何せ今までの経緯が経緯だ。めちゃめちゃ警戒したよね。
向かいから歩いてきてるんだけど、俺は足がすくんで止まっちゃったんだ。
そしたら予想外のことが起きた。
でっかいトラックが突っ込んできて、その女を吹っ飛ばしたんだ!
トラックは横倒しに滑りながら、すっごい勢いで俺にも向かってきたから、必死で逃げたよね。
これが、それまでで1番危険な瞬間だったよ。
で、まあ女の人は死んだんだろうけど、登校したよ。
え?警察に連絡?なんで?無理だよ。
電話ないし。
そんなことしてたら遅刻しちゃうじゃん。それはダメでしょ、皆勤賞とれなくなる。
そんでまた次の日も登校したのよね、そしたら昨日女がいたところの辺りに花束がおいてあってさ。
あーやっぱり死んじゃったのか〜って思ったのよ。
それで、ふと見ると向こう側から女が歩いてくるの。昨日と同じ位置、血まみれになってるけど、服装も一緒。
俺は混乱して立ち止まっちゃったんだけど、女は構わずずんずん来る。
というか、どんどん進む速度が速くなってくる、走ってる!
やばいやばいああやばい!!って俺は逃げ出したんだよ!
家に?
なにいってんの、帰ったら遅刻しちゃうだろ。
学校の方だよ。
今回は相手が相手だからね、捕まったらなにされるかわかんない。イノシシとか犬とはまた違った恐怖だったよ。
俺はかつてないほどのダッシュで、無事登校したのよ。不思議なことに校門をくぐると、女はいなくなったのね。
そういや、犬もイノシシも、校門を越えてはこなかったなー。
単純にひとがいっぱいいるから嫌がったのかもしれないけど、もしかしたら守り神みたいなんがついてたのかもね。
そんでまあ、困った。
今まではなんだかんだいって獣だからね、出来る出来ないは別として、どうすればいいのかはわかったもん。
殺しちゃえばいい。
でも今回は、死んじゃったひとだからね。おばけ、幽霊。たぶん、触れない。
殺しようもないじゃない、もう死んでんだから。
だもんでしばらくはひたすら逃げ続けていたんだけど、これが大変で。
獣ならある程度どう動くか予想できるんだけどさ、相手はおばけなもんで。
壁突き抜けたり垂直に登ってきたり、軌道が全く読めなかったんよね。
何度か捕まりかけて肝を冷やしたもんだよ。
だからすっかり参っちゃって、とうとう今までしなかった、人に頼るってことをしてしまったんだ。
といっても相手は幽霊だ。親や先生に話しても本気にされないだろう。
だから、近所にある寂れた神社の神主に相談してみたんだ。そのひとはボケてるって評判だったんだけど、藁にもすがるってやつよな。
俺の涙ながらの訴えを、腕組みしてフムフムっていって聞いてくれたんだけど、話し終わるとチョイチョイって俺の肩のあたりを払って、ニッカリ笑ったんだ。
その後は俺が何言っても、はいはいって適当にかわすだけで話通じない。
絶望したよ。やっぱり誰も助けちゃあくれないんだってね。
んで、次の日の登校、やっぱりいるのね女が。
今まではとにかく恐ろしかったけど、その日はふつふつと怒りがこみ上げてきたんだ。
なんで邪魔されなきゃならないんだ、俺は何も間違ったことしてないのに、ってね。
で、遠くから女をキッと睨みつけてやった。
そしたらさ、不思議なんだけど自分の目の前に、微かに光る道筋が見えたんだ。ほんとにうっすらなんだけど。
その時こう思った。
この道を辿っていけば、安全な気がするってね。
その道はとにかく変な軌道で、真っ直ぐ行ったかと思えば引き返したり、その場でぐるっと一回転したり。
ただとにかく俺は無我夢中でその道を走り抜けた。
そしたらね、道を辿ってるだけなんだけど、なぜかうまーいこと、幽霊をまいている。
俺は理解した。
この黄金の軌道は、俺を学校まで安全に運んでくれる道筋なんだ!って。
無事登校できたよ。
道筋はそれから毎日出てくるようになった。
最初はうっすらだったのがどんどん形がはっきりしてきたし、
仕舞には幽霊女の手前で「DANGER」なんて標識まで出るようになったんだ。親切なことだね。
で、前までは逃げ回るのに必死だったんでそれどころじゃなかったんだけど、周りを見回す余裕ができてきた。
するとね、道は一本ではなく、無数に伸びているのに気づいたんだ。
慣れてきた俺は、ある道を辿りつつ、途中で別の道に乗り換えたりすることを覚えた。
これを覚えると、より簡単に幽霊を翻弄できて、実に愉快だったよ。
それにこの道はね、辿っていると、どんどんポジティブな気持ちになってくる。
力が漲って勇気が湧いてきて、体が黄金に輝いてくるんだ。躁状態っていうのかな。
それと同時に、怒りも湧いてきたんだ。自分のこの黄金の通学路を邪魔する幽霊に対してね。
こいつさえいなければ、もっと気持ちがいいのに。
で、ある日をさかいに、安全じゃない道。
危険なはずの、その幽霊に向かって伸びている道が見えるようになった。
道は、日に日に増えていったよ。
ある日俺は、矢も盾もたまらずその道を全速力で駆け抜けて、幽霊目掛けて真っ直ぐ突っ込んだ。
完全に頭に血が上ってた。堪忍袋の緒がきれたんだ。
そんで、黄金に光る拳で、幽霊をぶん殴ったんだ。
なんと、殴れました。
物理攻撃って霊体に有効なのかな。まあたぶん、道を辿っていたおかげなんだろうけど。
でもなんか、殴ってしまうとエネルギー?漲る力が抜けた感じがしたんだよね。
だからまた道をぐるって大回りして漲ると殴る、またぐるっと辿って漲ると蹴るって繰り返し。
もう幽霊ボコボココース。
でも大丈夫、時間は食ったけど遅刻はしなかったよ!
幽霊?ああ。なんか消えちゃった。
幽霊も死ぬんだね。
その後神主のじいさんにお礼を言いに行ったらさ、ぽっくり死んでたよ。
だもんでこの能力がじいさんのおかげか、たまたま俺が覚醒したからなんかはわからないねー。
これが6年の時の話だから、3年も幽霊と追っかけっこしてたんだねえ。
で、また安全に登校出来るかと思ったんだけど、なんと今度はUFOが…
え、もういい?これからが盛り上がるとこなんだけど。
まああんたのいう通り、同じことの繰り返しだよ。
みんながなぜか俺の邪魔をする。俺は光って殴って登校する。皆勤賞。
負けたら記録が途絶えちゃうからね、必死だよ。
今まで、誰かの邪魔を受けずに登校出来たことがないんだ、ただの一度もだぜ?
でも、俺は一度だって学校を休もうとは思わなかった。
だって俺は間違ったことをしてないんだから、なんで登校を諦めなきゃいけないんだ?
光の道が見えるようになってから、俺は相手を恐いと思わなくなった。
あの道を辿っているとね、自分が正しいことをしていると強く感じるんだ。
最もその前から、俺はいつでも正しいけどね。
あんたが強い奴を集めてるのは分かったよ。なかなか趣味の悪いことをしてるじゃない。
いってしまえば、殺し合いの斡旋だろ?
まあ俺は正義の味方じゃないからさ、とくにどうこう言わないけど。
だけど俺は参加なんかしないよ、どうして俺がそんなことしなくちゃならないんだ?
それで殺されることになったって、俺は自分がやる必要のないことはやらない。
自分が正しいんだから、胸を張って死んでやるさ。
ただもし相手が俺の通学を邪魔するってんなら、その時は相手になるけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます