死を夢む
伯林 澪
序・Death is just the Beginning
ロシア北部・ポリャールヌイ――寒風の吹きすさぶバレンツ海のほとりにあるその街に佇む
風が吹きつけるかびに
だが――ながい抑留生活は、彼の体をすっかり朽ちさせてしまっていた。肺
――失われし懐かしき湖岸、流浪の身をも慰める……
――追憶の調べが聞こえれば、サッキヤルヴェン・ポルッカ……
彼はかぼそい声で、むかし故郷でよく聞いた歌を口ずさんでいた。――寒さに凍える彼の身体は熱を欲していたが、煤けたストーヴに薪をいれる気力も、台所に行ってあたたかい飲み物を入れる気力も、彼の枯れ木のような身体からは喪われて久しかった。
(私は、
その感覚が、いまさらのように彼におそいかかり、彼は歌うのをやめて心のなかでわめいた。――だが、彼の心中の熱とは反対に、彼のにぶく痛む手足は、わずかに残っていた温度をも喪おうとしていた。
(脚が――手の先が、冷たい……)
恐怖におびえる彼の眼の前で、隙間風に吹かれた
とその時、落ちた硝子壜の動きが止まった。
同時に、彼の手足を這いのぼっていた鋭利な冷気がぴたり、と止まり――すでに色褪せていた周囲の景色がモノクロームに染まる。
彼が驚いていると、彼の
「もう
死を夢む 伯林 澪 @vernui_lanove
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。死を夢むの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます