3.東京・学生寮 写真

 一週間前のことだ。私の寮の部屋に、寮母をしている西田さんがやってきて、私に写真が無いかって聞いたのだ。

 

 「写真ですか?」


 「ああ、今日、あんたの友達の結奈ゆいなちゃんが寮にやってきてね。あんたの写真が欲しいって言うんだよ。何でも、あんたに内緒でプレゼントしたいものがあるから、それを買うのにあんたの写真がいるんだってさ。だから、あんたに内緒で、あんたの写真を渡してくれって言って帰っていったよ・・あっ、あんたにしゃべっちゃったら、内緒にならないよね。私ってバカだね。あはははは」


 西田さんはあっけらかんと大声で笑った。


 結奈が?


 私は何だか釈然としなかったが、結奈と昨年プールに行ったときの写真を西田さんに渡した。私がプールサイドに腰かけていたときに、結奈が私のカメラで撮ってくれたのだ。


 その三日後だった。私は大学で結奈に会った。そしたら、結奈が私にこう言ったのだ。


 「私、山岡君のこと、あきらめるわ。それでね、山岡君のことで茉央まおに迷惑をかけたから、これお詫び・・」


 そして、結奈は麻でできた素敵な萌黄もえぎ色のポシェットを私にくれたのだ。そのポシェットには貴船神社って書いてあった。


 「高校の友人と京都に行ったの。これ、京都のお土産。これでね、茉央と仲直りしたいんだ」


 私はもちろん結奈に「いいよ。もう仲直りしよう」って言った。西田さんのことは結奈には話さなかった。


 しかし、私の頭に疑問が残った。貴船神社のポシェットを買うのに、どうして私の写真がいったんだろう? そして、どうして私に内緒にしようとしたんだろう?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る