第2話:引きこもるのは個人の自由 ①

最近、“引きこもり問題をなんとかしなくてはいけない”という声が聞こえてくるが、そもそもその要因となる事柄を中和させないで“なんとかしなくてはいけない”というのは虫が良すぎる話ではないだろうか?


なぜなら、ここまで深刻になるまで放置して、いざとなったら「そのような人たちがたくさんいるから使えばいいのではないか?」という短絡的な発想に思えてしまう。


それらをオブラートに包んで「こういう支援をするから働き手になってほしい」と言っても心が動くわけがないのだ。


そもそも、そのような人たちはさまざまな理由から身を守る行動をしているわけで、何も理由がなくそのような行動をしているわけではない。


むしろ、もっと早急に対策を講じていればここまで傷口が広がらずに済んだはずである。


 この問題は他人がいろいろ詮索する事、こうあるべきという論理的なものを振りかざして、自分の固定概念を相手に押しつけてしまうなど他者視点で言う必要はあるが、これは本人の意思を理解したうえでアドバイスとして話す必要がある。


そもそも、引きこもる事は大きな問題ではない。


本人の気持ちが外に向くようにどうすれば良いのかを考えれば微々たる力ではあるが解決に向けた光が差してくる。


しかし、本人が立ち直れないような状態になってしまうといくら外に向かせるように促しても難しいのではないだろうか?


この問題の根本的な問題というのはその人が歩んできた人生でどんな経験をしてきたのか、どのような理由で働けなくなってしまったのかを精査するところから始めなくてはいけないと考える。


例えば、Aさんは30代前半だが、大学卒業後に就職に失敗し、就職浪人を3年間の経験を経て、中小の広告代理店に入社した。


しかし、上司からのパワハラにより二年前に広告代理店を退職し、家族も心配するほど人格も思考もネガティブになってしまった。


しかも、再就職先を探すも、年齢的なものなのか、業務経験が要因なのか分からないが、採用されることなく30歳を迎えた彼は家で過ごす時間が増えていき、ついには部屋からも出られなくなってしまった。


心配した奥さんが病院に連れて行くといわゆる精神疾患を発症しており、医師の所見によると「現段階では一定期間の療養を優先させなくては働けなくなる。」と告げられた。


しかし、彼には小学生になる双子の息子と娘、年長の娘、生後間もない息子がいる。


そのため、経済的に厳しくなり、奥さんも働いているが、育休で年度内は給料こそ出ているが、とても家族6人が生活できるレベルではないため、奥さんと話し合った結果。


子供たちの精神的な影響に考慮して、家族とは限定的に別居する事にした。彼は実家に帰り、平日は実家で療養し、休日や長期休暇は自宅で過ごしていた。


 このAさんの場合は、新卒採用に失敗し、就職浪人をしなくてはいけないという否定的な事柄を経験し、就職・結婚・子供の誕生と肯定的な事柄が続いた後に再びパワハラ・退職・別居と子供の誕生と否定的な事柄と肯定的な事柄が交互に起きている。


そして、肯定的な事柄と否定的な事柄を交互に経験したことにより、肯定的な事柄である程度まで保たれていた精神状態が否定的な事柄によって精神的に病んでしまっているのだ。


つまり、彼を社会復帰させるためにはまず、恐怖を取り除く作業が必要になり、そこから他者からの信頼の回復、潜在意識の段階的肯定認知など時間がかかる可能性がある問題を持っている。


このようになってしまうと最低でも治療しながら勤務できるような環境を整備するか、テレワークで仕事をこなせる会社を斡旋する必要がある。


そのため、本人がある程度立ち直る事が出来ていないといくら周囲が動いても、1度失ってしまった自信はなかなか取り戻すことは難しい。


もちろん、発生したすべての事に対して全て本人が正しいわけではないが、そのような環境下にさらされたことで偏向的な思考が先行してしまう。もしも、そういう人たちの支援を行うのであれば、幼少期から持続的かつ継続的な支援を行う必要があると思う。

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