第7話 バインディングオファー①

 第5回講座。


 さすがに、前回の虎の巻講座を経て、ほかの受講者のみんなもそれなりにDDをクリアできたようだ。


「まあ、今回でDD完了までいけなかったとしても、またいい人を見つけ直せばいいから気にしないこと。この講座もまた第1回から受け直してくれても良いからね」


 できなかった人のために講師もフォローを入れる。

 いやこれは継続受講の勧誘か。


「では、今回は、いよいよプロポーズです」


 講師は授業を開始した。


「M&Aでは、最終契約に入る前に、買い手がバインディングオファーと呼ばれる、買収の最終意思と条件を提示するイベントがあります。まさしく、プロポーズのことです」


 ついに、プロポーズ!夢にまで見た瞬間ね。


「M&Aの場合も、婚活の場合も、プロポーズまであまり長い期間をおきすぎるのはよくありません。なぜかわかりますか?」


 講師が私を見る。

 やばい、わからない。


「すみません、わかりません」

「あなたはエッチは得意だけど、考えることは苦手のようね」


 また、みんなに爆笑されている……もう、なんで毎回いじられるのよ。


「通常の恋愛であれば、じっくり時間をかけていくこともありです。でも、婚活の場合は、そもそも両者ともに結婚前提で候補選びをしているはずでしょ」

「はい、そうです」

「それなのに最終段階でなかなかプロポーズされないとしたら、必ず何か大きなズレがあるはずでしょう」


 確かにそうだ。

 お互い早く結婚したいと思っていて、相性が良い2人なら、自ずとプロポーズが行われて然るべしということね。


「なので、もしなかなかプロポーズをもらえないようなら、無理して待つ必要なんてありません。さっさと一から探し直して、本当に自分のビジョンに合う相手を見つけた方が良いのです」

「なるほど……」

「ここできちんと割り切れないと、ずるずるいって単なるセフレになってしまう危険もあるの。特にあなた。気を付けるのよ」


 え?え??何で私なのよ?










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