第2話「剣と魔法の世界へようこそ」

式柴京太郎 停学1ヶ月


学校始まって以来の事件。

前代未聞の入学から2ヶ月で停学⋯⋯

これでクラスで浮くこと確定しちまったなぁ。


“だけど俺は後悔していない”


なぜなら四六時中しかも1ヶ月もファンガルスフロンティアにダイブできるんだからな。

イベント稼ぎ放題。装備も豪華になるぜ。

これでまた強くなれるなぁ。


「あー、リアルでもゲーム内で稼いだ金が使えたらなぁ。

俺は周りがひくぐらい稼いでるし、むしろ親父の年収なんかとっくに越えている⋯⋯

てか、できるだろ! 電子決済主流の世の中なんだから」


ため息がこぼれる。

正直、悔しい。


「剛乃のヤツ⋯⋯」


理不尽すぎるだろ。


「剣と魔法がリアルで使えたらなぁ⋯⋯」



“ピンポーン”


「⁉︎」


***


「相馬⋯⋯」


相馬がなんで俺んちに⋯⋯


「式柴君⋯⋯このまえはありがとう⋯⋯」


俺にわざわざお礼を言いにきたのか? 

だけどなぜそこでメガネを外す⁉︎


「⋯⋯」


アレ? ちょっと美人⋯⋯


「私のせいで停学になってごめんね⋯⋯」

「気にするな。剛乃の言いグサが気にいらなかったんだ」


『気づいていたんだよね! 私が剛乃に言いがかりつけられてひとけのないとこで身体触られそうになっていたのを!』


「え⋯⋯」


ウッソー⋯⋯全然気がついていなかった。

剛乃のヤツ、見た目もゴリラなら頭も猿だな。


「だからお礼をしに来たの。式柴君、ファンガルスフロンティアのSランク冒険者“ディート”よね」

「⁉︎」


相馬がなぜ俺の本当の名を!

おっとアカウントネームだ。

ついつい一度は言ってみたかったセリフを⋯⋯



「どうして俺のアカウントネームを知っているんだ? お前まさかーー」

「プレイヤーよ。ちょっと特殊な」


そう言って相馬はトートバッグからスタンガンのようなモノを取り出した。

ッ? スタンガン⁉︎


「これは私からのギフト」


相馬は直接、俺の頭にスタンガンを当ててスイッチを押した。


“バチバチ”


***


「目が覚めた⋯⋯」


目を開けると色っぽい相馬が顔を近づけてくる。

「⋯⋯」

「顔が少し紅いけど大丈夫そうね」

「いや、それはその⋯⋯てかッ! 俺に何をした。頭にスタンガンビリビリって

俺を確実に殺害しにきたよな? 暗殺か? 俺はなんかお前の知ってはいけない秘密を知っちまったのか⁉︎」

「インストールよ」

「インストール?」

「そう。脳に直接、ファンガルスフロンティアをインストールしたの」

「は?

「来て」


相馬は俺の手をひっぱって俺を玄関から連れ出した。


***


「おい、俺をどうするつもりだ」

「手で宙をなぞってみて。ファンガルスフロンティアみたいに」

「はあ?」


相馬は俺の顔をみてコクリと頷くだけ。


「まぁ⋯⋯ ⁉︎」


これはいったい⋯⋯


「コンソール画面が表示された!」


「フォルム選択を選んでみて」

「ああ⋯⋯」


相馬に言われるがままコンソール画面を操作。


「⁉︎ これはファンガルスフロンティアの“ディート”! どうなってるんだ? 

顔も衣装(コスチューム)も一緒じゃないか?」


「驚くのはまだはやいわ」


「アレ? 相馬どこへ行った?」

「ここよ。ここ」


みやると相馬は小さな妖精の姿になって俺の肩の上に乗っていた。

「これが私のアバター姿なの」

「ん⋯⋯」

「戸惑ってないで武器をタップして」

「ああ⋯⋯」


⁉︎


「目を疑った俺の手には苦労して手に入れたレアスキルソード“レギオシュナイダー“が握られている。


「どういうことだ⋯⋯」

「リアルでファンガルスフロンティアのスキルが使えるようになったのよ」

「それってつまり⋯⋯」

「試してみなさい。ほら、ちょうど目の前の交差点でブレーキが壊れて止まれなくなった

車が信号待ちしている人たちの中へ突っ込んでくる」

「⁉︎」


おい、それって⋯⋯


「スキル発動よ」


『氷の壁(フリード・ウォール)』


防御魔法の“氷の壁”で交差点の人たちに盾をつくる。

そしてーー


『スキル“神速”』


瞬間移動級のスピードで車の前へーー


「そしてスキルソード“ベイルズスラッシュ”」


俺の剣でタイヤがパンク。

そのままスリップして車はギリギリ停車した。


「咄嗟だったけど、マジでスキルが発動できた⋯⋯本当にどうなっているんだ」

「これで闘ってくれる?」

「なにと?」

「私たちに理不尽を強いる“生徒警察”と」

「は? ⋯⋯ ああところで周りの人たちには俺はどのように映っているんだ?」

「パジャマ姿の男性」

「はあ?」


つづく

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