第27話 レベル到達

『おい、起きろ』


 ニムバスの声が聞こえる。


 相変わらずの横柄な物言いだ。


 実に腹立たしい。


「何だよ、偉そうに」


 俺はそう言って、ゆっくりと瞼を開いた。


 そしてやおら起き上がり、周囲を見回した。


「あれ?ニムバスは?声が聞こえたんだけど……」


 俺の視界にはエニグマは居るが、にっくきニムバスの姿は見当たらなかった。


 …………いや、その前にちょっと待ってくれ。身体の痛みが……ないぞ。


 俺はエニグマに向かって勢い込んで問い掛けた。


「痛みがない!もしかして終わったのか?」


 エニグマは軽くうなずいた。


「終わりました。ニムバス様はすべて貴方の中に」


「そうなのか?じゃあさっき聞こえた声は……」


 すると再びニムバスの声が響いた。


『お前の中から話しかけているだけだ』


「そうか。じゃあ本当に終わったんだな」


『ああ。良くやった。褒めてやる』


「ふん、お前に褒められても嬉しくない」


『そうか。まあそんなことはどうでもいい。さあ、早速行こうじゃないか!』


 珍しくニムバスの声がうわずっている。


 それもそうか。


 外へ出るのは千年ぶりだもんな。


 でも本当に俺のレベルは一万に上がったのか?


 俺は気になり、すかさずステータス画面を開いた。


ーーーーーーーーーーーーーーー


  ジーク=テスター


  レベル:10872


   HP:329403


  ちから:489113


 すばやさ:511938


  まもり:342261


 かしこさ:261978


   MP:214975



  クラス:



 特殊能力:毒無効 暗闇無効 麻痺無効 沈黙無効


      物理威力MAX 魔法威力MAX


      物理耐性MAX 魔法耐性MAX


      炎魔法MAX 氷魔法MAX 雷魔法MAX 


      地魔法MAX 風魔法MAX


      闇魔法MAX 召喚魔法MAX


      HP自己回復MAX MP自己回復MAX



   称号:悪魔王の分身 武闘神 守護神 大賢者 絶音の暗殺者


      真理の探究者 錬金術師


      ドラゴンキラー ビーストキラー ギガントキラー


      エビルキラー ゾンビキラー


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

      

 本当にレベルが一万を越えていた。


 それにしてもその後に続く数字も、ちょっと呆れるくらいのものが並んでいる。


 なんだよ、軒並み10万越えって。


 それに称号も、物騒な感じのものが並んでいやがる。


 だけど一つ気になることが。


「ドラゴンスレイヤーの称号が無くなってるんだけど……」


 するとすかさずエニグマが俺のステータス画面をのぞき込みながら答えてくれた。


「ドラゴンを100体以上倒しましたので、ドラゴンキラーに昇格しただけです」


「てことは……上位の称号を得たってわけだ」


「そうなります。その他のキラーの記述も同様です」


「なるほどな。確かにどれも100体以上倒した気がする」


「はい。ですので貴方にとっては僥倖かと」


「ああ。上位の称号があれば、侯爵位を継ぎやすくなる。これだけあれば相変わらずのクラス無しでも認めてくれるはずだ」


「そうですね。まだ侯爵位が空位であればの話ですけど」


「そうだった」


 そこで俺は、内なるニムバスに向かって話しかけた。


「出来れば急いでここを出たい。どうだ?名残惜しいか?」


『ふん!千年も居たのだ。名残惜しくなどない』


「そうか。ならすぐに出るぞ」


『ああ。楽しみだ』


「初めて意見が一致したな。俺もだよ」


 俺はそう言いながらすでに駆けだしていた。


 ついに俺はここを脱出する術を手に入れた。


 待っていろよアリアス!エドゥワルド!


 すぐに戻って、侯爵位を継いでやるからな。


 ……と言っても、まだ空位だったらの話だけど……。

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