06 不在



 ティナが残した店は俺が継ぐことになっていた。


 あの騒動で店主もいなくなってしまったからな。


 ティナは、遺書なんてものを書いていたらしい。


 店長や従業員が生きていたら、そいつに店をあげるとかなんとか。


 ていうか、この店ティナの財産だったのかよ。


 引退した時にお金使ったのって、それが本当の理由?


 だったら、自分が店長でいいじゃん。


 でもティナは、他に頭の良い人を店長にしたかったんだろうな。


 あの遺書は、薬を買うのが間に合わなかった事を想定して、かいたのだろう。


 その場合、店がなくなってしまう事を惜しいと考えたのだろうか。


 俺は、どうすればいいのかよく分からないけど、薬師のおっさんの手をかりながらその店を再開させようと思った。


 専門的な事はさっぱり分からないからかなり苦労したけどな。


 一度シュドがやってきた時におっさんがいて、一触即発の雰囲気になったけど、シュドは見逃してくれるようだった。


 俺一人だと店の経営がままならないと分かっていたからだろう。


 復興がすすんでくると、お客さんがぽつぽつとお店にやってくるようになった。


 小さな子供からお年寄りまで、たくさんの人に愛されている店だった。


 でも、そこにティナはいない。

 来る人来る人が残念そうにしていた。


 彼等が頼ってくるのは俺じゃなくて、この店とそしてティナ。


 ぞれはずっと変わらない気がした。


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