05 木を隠す



 数十分くらいで、異変は収まった。


 けれど、ティナはもう……。


 シュドは俺を責めなかった。


 俺は、自分のせいだという事実から逃げたくて、避難所の手伝いに奔走していた。


 忙しかったから、忘れるにはうってつけだった。


 やるべき事はたくさんあったからだ。


 これからどうしようかな、そんな事をぼんやり考えていたら、牢屋から罪人達が脱獄したとかいう話がきこえてきた。


 地割れで建物の一部が壊れたらしい。


 それで、脱獄してしまったのだとか。


 俺が牢屋で死んだのは、運が悪かっただけか。


 でも、どうでも良かった。


 シュド達や他の人達がなんとかしてくれるだろと思っていたし、俺にできる事などないと思っていた。


 そんな中、避難所で薬師のおっさんにであった。


 どうどうと働いていたので、ぼうっとしてて普通にスルーするところだった。


「おっさん、なんでここに」

「はて、始めて会った顔じゃがの?」

「細かいことはきにすんな。脱獄したの?」

「証拠とか事情聴取とかめんどいじゃろ?」


 いやいや、大事な事。

 濡れ衣ならめんどくさがるなって。


 話をしたら、「木を隠すなら森の中」だとか言っていた。


 まあ誰だって、こんなところで罪人が善行してるとは思わないだろうしな。


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