頁35:後の祭とは
不規則に並んだ統一感の無い建物の間を縫い、先程までいた
「な…!?」
最終コーナーを曲がり切り視界に飛び込んだ光景は───
『『『『シ・シ・バ!! シ・シ・バ!!!』』』』
すり
なにこの状況。
「みっ、みさッ、さっピー! たすっ、たすけっ! オタスケっピ!!」
助けてっピと言われましても。楽しそうですし。
と言うかこの大穴…何が起きたのだろうか。この人数でこれだけの穴を掘るには時間的にまだまだ足りない
「あの! すいません!!」
『『『『 !!! 』』』』
ヒッ!?
私の声にそれまで歓声を上げながら胴上げをしていた男性陣が、ほぼ同時に動きを止めて私の方を見た。ギラっと。
「おぎョぐぇッ!」
放り上げられた後に受け止めてもらえなかった
「あ、あのですね…その…落ち着いて……」
「『 』
誰かが不穏な発言をした。
まさか我々の正体がバレたのか。
「まさか…」「そのまさ…か…?」「おいィ…」
え…ちょ、何ですか。
あ、分かった。これは絶対に
『『『『ああああ女神様あああああああ!!!!!!』』』』
「いやああああああああああああああああああ!!!!!!」
目が
本能的な恐怖を感じて私は一目散に逃げだした。女性陣の陣地へ。
「ちょっと! オレは!?」
そんなの自分で何とかして下さい!!
◇◆◇◆◇◆
女性陣が
半泣きで全力疾走して来る客人である私をおかしなテンションで追いかけてくる男性陣…という構図に異常事態を感じたよしこさんが
「で…? どういう事だい…ああ? 穴掘りはまだ終わっちゃいないと思うが…何を遊び歩いてるってのかねぇ…? しかもミサキちゃんをこんなに怖がらせて泣かせて…おーよしよし…怖かったねぇ…」
な、泣いてません。(半分しか。)
先程の
「……はいじゃあ代表してたけし」
「あ、は、はい…」
たけしさんと呼ばれた初老の男性が震えあがりながら返事をした。
確かこの方は我々が最初にこの村に来た時にひろしさんと話していた方だったか。
それにしても本当に『The 日本人名』だな。
「し、シシバが…あ、いや旅人さんのあんちゃんがよ…、『 』たった一振りで…でけぇ穴を掘っちまってよ…」
「何バカを言ってんだい! 嘘も
「ヒィィ!!」
たけしさんが恐怖で仰向けにひっくり返った。正座のままで。体柔らかいんですね…。
すると、
「あの~…それホントなんです…。いや、オレもなんでそうなったのかさっぱり分かんないですケド…」
よしこさんの鋭い眼光が
「ヒェッ」
「…それは…本当かい…?」
「は…はひ…」
「あの、よしこさん、どういう経緯なのかは私も見ていないので分かりませんが、確かに穴はもう掘られてました」
同じ立場なのにちょっと可愛そうな気がしたので私からもフォローを入れる。
私の言葉を聞いてよしこさんの表情が少し柔らかくなった。気がした。気のせいかも。
「ふむ…なるほどねぇ。──シシバさんと
言葉が出なかったのか必死で首を縦に振る彼。
よしこさんはゆっくりと彼の方へ歩み寄る。
「私達の村の仲間の為に、何の
そう言うと、よしこさんは腰が抜けかけた
「へ…?」
予想していなかった
「ミサキちゃん」
「は、はい」
よしこさんが手招きで私を呼ぶ。なんだろうかと
「えっ」
「ちょ、ばーちゃん!?」
「…ありがとう…ありがとうねぇ…」
「「 !! 」」
突然の事に驚いたけれど、すぐに分かった。抱かれた腕が細かく震えている。顔が見えなくてもその声で分かる。
「無念だっただろうに…もっと生きたかっただろうに…。だけどあなた達に
気付けば、皆泣いていた。明るく振舞っていたように見えたけれど、誰しもが心に深い傷を負っていたんだ。そんなの…当たり前じゃないか。
「ごめん、ばーちゃん…。オレのせいで…」
「
「…うん」
もらい泣きしている
「あなた達のせいじゃないよ…。全ては星の定め、『 』の思し召しさ」
無音…? 思し召し、という言葉から想像出来るのは───
「さあさあ! 泣いてないで皆で一気に準備しようじゃないか!」
よしこさんが力強く発する。
それに応える皆さんの歓声。…そうか、私達も今、きっとこの村の人間なんだ。だからこそ最後まで責任を取らなければならない。命を落とす運命を強制的に与えられてしまった人達の為にも。
それが
誰かがボソッと呟いた。
「泣いてないで、って…よしこさんも泣いてたクセになぁ…」
「おだまり!!」
この星に来てから最初の夜が近付こうとしていた。
(次頁/36へ続く)
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