第314話 空間転移突入

『……!!!』


 二発ものエンシェントドラゴンロードのドラゴンブレスを受けて、流石にサマエルの肉体もエイシェトもほぼ吹き飛ばされて消滅していった。

 数億度のプラズマカノンを食らって耐えられる存在などいない。

 神々の肉体すら滅ぼしたティフォーネの吐息は、サマエルの肉体すら滅ぼしていた。

 肉体の9割を吹き飛ばされたこの状況では、いかにサマエルといえど完全再生は不可能である。

 残っている肉体はほぼ1割。その1割もプラズマの高熱によって消滅する瞬間、空間転移によって消え去った。

 サマエルがその判断を行うはずもないので、恐らくエイシェトの意思なのだろう。

 もはや肉片になってまでもしぶとく生き残りたいらしい。

 そして、それに気づかぬティフォーネではなかった。


《まったくしぶといですね。おまけに空間の穴を最小限度にして私が入れないようにしているとは……。すみませんが、貴方たちが追いかけてくれませんか?》


《ち、ちょっと待て!妾たちにあのプラズマの中に飛び込めというのか!?さすがに無茶がすぎるぞ!!》


 確かに、エイシェトの肉片が逃げた空間転移の穴はまだ存在しているが、そこは未だにプラズマの熱が消え去っていない灼熱地獄である。


《ここであいつを逃がすとまた後で厄介なことになりますよ。それは貴方たち自身がよく知っているはずですが?結界は張ってあげますから、さあさあ行った行った。》


《ち、畜生!覚えておれよ!!》


 その言葉と共に、ティフォーネの張った結界で身を守りながらリュフトヒェンとアーテルはプラズマの嵐の中に飛び込んでいく。

 たとえ竜であろうが消滅するその灼熱地獄を潜り抜けながら、リュフトヒェンとアーテルはエイシェトが転移した空間の穴へと飛び込んでいった。

 本来はすぐ消え去るはずのその穴を、シュオールあたりが固定していたのだろう。

 それを見届けて、ティフォーネは、はぁと思わずため息をつく。


《はぁ、さすがに疲れましたね。》


 空中に浮遊していたティフォーネは、地上にふわりと降りると、竜のままの姿でぐたりとした姿になる。さすがに彼女と言えど全力のドラゴンブレスを2連続で放つのはきついらしい。


《まあ、ご苦労様じゃ。後は儂ら年寄りじゃなくて若い者たちに任せよう。》


《はぁ?私は若いんですけど?たかがこの世界が生まれた時とほぼ同じぐらいで、子供一人生んだだけなんですけど?》


それで若いのなら、この世界の全生命体は全てピチピチじゃな、とシェオールはため息をついた。


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