第298話 暴走
アスタロトが分解されて、何とか50%に満たない魔術式でも、エイシェトは術式を決行した。帝都全域を覆う逆五芒星の光が上空の肉塊に照射され、大口を開けているサマエルの器に半ば無理矢理サマエルが降臨する。
肉塊が大きく震えると、ベキベキと上方部が盛り上がり、そこから七つもの巨大な竜の首が飛び出してくる。
さらに、巨大な蝙蝠状の被膜の翼が複数飛び出し、合計六枚三対の巨大な翼も姿を現す。
七つの頭と十本の角を持つ竜は、その七つの頭から絶叫のような咆哮を上げる。
さらに、その表面はサマエルの影響を受けてかまるで燃えるように深紅へと変化していった。その竜が吠えるたびに、空は雷雲が鳴り響き、太陽は黒い雲に隠れ、雷撃が次々に地面へと着弾して、地面を粉砕していく。
その惨状は、まさしく世界の終わりを告げる黙示録の存在そのものだった。
半ば粉砕・分解された王宮の中で、その禍々しくも神々しい姿を見て、サマエルの妻であり、この地上にサマエルを降臨させたエイシェトは歓喜の声を上げる。
「おお!我が主サマエル様よ!そのご威光を全世界に知らしめる時が来たのですわ!さあ、いまこそ……。」
その彼女の言葉は、サマエルの肉体の下半分から伸びてきた小型の竜の牙によって打ち砕られた。
どうして、の言葉すら言えず上半身を噛み砕かれたエイシェトだったが、彼女だけではない。
下半分から延びる無数の竜の顔は、帝都に襲いかかり、あらゆる物を噛み砕いていく。
狂ったように叫ぶ上半分の七つの竜の首を見ながら、バエルの分体は忌々しげに叫ぶ。
『完全に錯乱して暴走しているではないか!愚か者めが…!』
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