第294話 小逆五芒星儀式
王宮内部、露出度の高い深紅のドレスに身を包んでいたエイシェトは、血の滴るナイフを手にしながら魔術儀式を行っていた。
王宮内部はまるでペンキをブチ撒けたようにあちこちどす黒い血で埋め尽くされており、彼女はその血を使って王座の手前に逆五芒星を描いていた。
この王宮内部で快楽にふけっていた全ての存在が彼女の生贄へと変貌したのだ。
そして、それに呼応するように、帝都そのものにも血のような深紅の魔力で巨大な逆五芒星が描かれていた。
すでにサマエルを降臨させるための器自体は完成している。
後は、この帝都全てを生贄へと分解し、器自体にサマエルを降臨させるだけである。
彼女は血に塗れた短剣、アサメイで額に触れて「バチカル」と唱え、次に胸に触れて「エーイーリー」、右肩に触れて「シェリダー」、左肩に触れて「アディシェス」と唱えた。そして、最後に、胸の前で両手を組んで「ル・オーラム、サマエル」と唱えた後、さらに詠唱を開始する。
「我が前にバアル、我が後ろにベルゼブブ。我が右手にリリス、我が左手にアスタロト。」
血に塗れた短剣を血で描いた逆五芒星に突き付けて彼女はさらに詠唱を開始する。
通常、この小五芒星儀式は邪悪を追い払い、召喚を行うための下準備の儀式である。
だが、彼女はそれを逆用して、邪悪を自分の元へと集め、邪悪な悪魔をこの地へと降臨させるために使用しているのだ。
「我が周囲には逆五芒星が燃え上がり、我が頭上にはグリフォトの樹が輝く。
ありとあらゆる災い、我が元へと近寄るべし。我ここにおれど、邪悪なる悪魔に守護されたればなり。今こそ復活せよ。魔神龍サマエルよ!」
その瞬間、帝都全ての生命体の生命力が容赦なく吸収されて帝都に住まうすべての存在は死に絶える……はずだった。
「……?儀式がうまく作動しない?いえ、作動はしているが、10%もまともに力を発揮していないんですの?アスタロトとバアルが協力を拒んでいる影響か。」
彼女は思いっきり舌打ちをすると、儀式を組み替えるために魔術調整を始めた。
それは帝都の皆が避難するための貴重な時間を作り上げることになった。
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