第289話 包囲殲滅作戦

「よし!今だ!」


 怪物たちが狭い山の間の道に殺到した瞬間、両方の山に潜んでいた竜皇軍の兵士たちが備え付けていた火薬(以前開発していたダイナマイト)に火をつけて退避する。

 そして、その火薬が次々と爆発すると同時に、山の斜面に穴を掘り、大量の水魔術を注ぎ込み、緩んでいた地盤はあっけなく崩壊し、下の怪物軍の目の前へと崩れ去っていく。

 山が崩れ去る轟音と降りかかる大量の土砂。いわゆる土砂崩れだ。

 だが、これは怪物軍を埋め尽くすために行われたものではない。

 運悪く埋まってしまった怪物たちも存在するが、狙いはそこではない。

 これは、彼らを閉じこめるための戦法である。


 前には土砂崩れ、左右は山。そして後ろから竜皇軍。

 完全に包囲殲滅作戦に彼らははまってしまったのである。

 無理矢理山に登っていこうとする怪物たちに対しては、山岳部隊がダイナマイトを投げつけたり、上から石や岩を落としたりして上ってくるのを侵害する。

 無理矢理土砂崩れを起こした先に逃げようとする怪物たちもいるが、たっぷりと水を吸ってドロドロの土砂をそうそう登れるものではない。

 そして、そんなこんなをしている内に後ろから竜皇軍の兵士が怪物たちへと襲い掛かる。


「殲滅せよ!一匹たりとも逃すな!!」


 馬を駆ってロングソードを振りかざしながら、ドラゴンスケイルを身に纏った辺境拍ルクレツィアは兵士たちにそう叫ぶ。

 もはや怪物軍は包囲されたことによりパニック状態になり、有効な組織的対応が出来なくなっている。

 もし組織的な行動ができたら逆に戦力を集中させるなり、人間の盾を有効利用させるという手段も取れただろう。

 そういう冷静な行動を取らさないように、様々な手を使って混乱状況になるように仕組んでいるのである。

 そうして混乱状況で軍としての力をもっていない怪物軍など、もはや烏合の衆でしかない。次々と一匹残らず殲滅されていった。

 それは降伏を求める怪物たちであっても例外ではない。彼らは人間の逆鱗に触れてしまったのだ。そして、包囲された彼らは順調に殲滅されていった。

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