第268話 神聖帝国の内部状況

『ふむ……。なるほど。神聖帝国はもはや人間の兵士を必要としていない、というわけかにゃ。』


 その後、農民たちや残存兵士たちを纏め上げてレジスタンスに組み込んだアスタロトは、竜皇国にいるバアル神と魔術で連絡を取り合っていた。

 特に仲のいいといえるほどの間柄ではなかったが、お互いの目的を果たすために情報交換は定期的に行っている。

 変な奴にちょっかい出されて目的を達成できないのなど御免だからだ。


『その通りだ。私がレジスタンス活動を行った結果、もはや神聖帝国は人間の兵士すら切り捨てつつある。人間の兵士はとにかくコストがかかる。兵站の大量の食糧・物資、そして育てる時間やコスト。さらには、いざとなったら反乱を起こす危険性もある。それらを切り捨てて、自分に対して絶対服従の怪物のみの軍隊を作成できれば確かに効果的ではある。』


『……正気かにゃ?ただでさえ低い神聖帝国の株が底を突き抜けるにゃ。

「私たちは悪魔に支配された国家です」と大声で言っているようなものにゃ。」


『あいつらがいうには『新開発された魔導生体兵器』なんだとさ。全く聞いて呆れる。真実じゃなくても、嘘を何千回も言い続ければ真実となるとでも思っていそうだしな。そんなんじゃよ……人間の魂の輝きが見れねぇだろうがよぉおおお!!』


 いきなり切れだしたアスタロトに対して、バアル神はやれやれと思わず肩を竦める。

 彼の趣味嗜好はどうでもいいが、神聖帝国内部の情報に一番詳しいのは、レジスタンス活動を行っている彼らである。

 ならば、彼から情報を収集するのが一番手っ取り早いというものだ。


『で、これからどうするつもりなのかにゃ?残存した神聖帝国の兵士を纏め上げるつもりなのかにゃ?』


『ああ、そのつもりだ。切り捨てられた彼らをそのまま放置すれば野盗になるだけだが、纏め上げて戦力にすれば多少でもゼヌニムに対抗できる戦力になれるはずだ。あのクソ女の重い通りにならないときっちりと思い知らしてやらないとな。』


ともあれ、神聖帝国はもはや人間の兵士を切り捨て始め、怪物の兵士を量産し始めているというのは竜皇国にとっても重要な情報である。

アスタロトが残存する軍隊を纏め上げてくれれば、対神聖帝国に対しての大きな戦力になる。

バアルはそう納得して、リュフトヒェンに報告することにした。


『で、彼らを養うためには、大量の食料が必要だから支援よろしく。』


そのアスタロトの言葉に、バアルははぁ、とため息をついた。

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