第267話 無限食糧タングリスニ2

「「あははは!食べて!食べて!私を食べて!食べないとお前たちを食べちゃうよ!

 無限循環でどんどん増える!これこそ無限食糧だよ!もっともっと増えよう!!」」


 無限食糧タングリスニは無数の足を蠢かせながら、農民たちや兵士たちへと迫りくる。それは肉で出来た津波のような物だ。ただの人間程度で止められるものではない。

 だが、そんなタングリスニに対して、兵士たちはまるで農民たちを庇うべく前に出る。


「俺たちはクズ兵士だけどな……。クズにはクズなりの意地があるんだよ!!」


「どうせ飢え死にするんなら、ここで一花咲かせて散るのも一興だぜ!お前たちはさっさと逃げろ!何もかも放り出して逃げればあの巨体だ、逃げ切れるはずだ!」


 食料を村から強奪しようとするほど野盗に落ちぶれかけた兵士たちだったが、あの異常な怪物を見て、多少だが本来の兵士としての心が戻ってきたらしい。

 あんな怪物どもに農民たちが飲み込まれるのなら、自分たちが肉盾になる。

 その程度には兵士としての信念が残っていたらしい。


「ファランクス隊形を取れ!あいつの足を攻撃するんだ!!」


 兵士たちはファランクス陣形を取り、タングリスニの無数の人間の上半身の拳の攻撃をガードする。その間に、タングリスニの無数の足部を長槍で攻撃していく。

 巨大な肉塊を無数の人間の足で何とか支えているタングリスニは、足部の不安があるのは見ればわかる。しかも防具も何もつけていない足部ではその攻撃を防ぐことはできない。ざくざくと足部は長槍で傷つけられていくが、それをせせら笑うように、次々と傷口は再生していく。


 そんな彼らに対して、タングリスニは炎の魔術でファランクス陣形に炎を吹きかけていく。物理攻撃を防げる陣形でも火炎まで完全に防ぐことはできない。

そんな陣形が崩れたところに攻撃を仕掛けようとするタングリスニだが、どこからともなく投げつけられてきた無数の炎のついた松明により表面を焼かれ、悲鳴を上げながら遠ざかる。


「今だ!ありったけの松明を投げつけろ!油をあいつの足元に撒いてやれ!」


それは、逃げたはずの農民だった。彼らは自分たちでも戦える手段を模索していたのである。油の詰まった樽をタングリスニの足元に投げつけ、そして火をつけてタングリスニを猛烈な火炎で丸焼きにしていく。


「うおお!炎で焼き尽くしてやれ!そっちが兵士の意地があるのならこっちにだって農民の意地があるんだよ!!」


だが、炎に包まれたタングリスニはそれでも平気で動き出している。

強靭な再生力を持つタングリスニにとって、表面が焼け落ちる程度なんの問題もないのだ。

それでも蠢いて攻撃を仕掛けようとしている肉塊を無視するように、パチパチと場違いな拍手がどこからか響き渡る。


「争う人間同士が敵を前に協力する。これもまた人間の魂の輝き。アスタロスポイント50点を上げよう。先ほど食べ物を強奪しようとしていなかったら70点でしたが……まあ仕方ないか。」


その声と共に、地面が盛り上がると巨大なドラゴンの顔が姿を現し、タングリスニをパクリと喰らい、その牙で噛み砕く。

散々噛み砕いた後でガムのようにぺっと地面に残骸を吐くと、その残骸を自分のブレスで焼き尽くす。これではさすがに再生もできまい。

そして、皆があっけにとられているなか、一人の男が兵士や農民の前に出てきて話しかける。


「ようこそ、よければ、俺のレジスタンス活動に身を投じる気はないかい?」


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