第247話 火計

 何とかサラマンダー系列の竜機を一騎倒した彼らだったが、さらに《サラマンダー・ハーゲン》たちはぞろぞろと数体姿を現してくる。

《ノーム・ニクス》は基本的に結界を張って相手を防御するだけの機体である。

 数体の《サラマンダー・ハーゲン》たちから集中射撃されてしまっては、流石に結界も持つまい。


「だったら、これはどうだ!これでも食らえ!!」


 カタパルトを使用しているグループは、とある樽を持ち出してくると、それをそのままカタパルトに乗せて射出する。

 その射出された樽は《サラマンダー・ハーゲン》を外れ、その近くへと命中するが、その中から大量の液体がブチまけられる。

 そして、続けて射出されたその液体の入った樽は、サラマンダーの肩部の魔術砲台へと命中し、大量の液体が機体の肩部を濡らす。


『ハッ!何投げてるんだあいつら!液体なんて何のダメージにもなりゃしないだろうが!』


『!?おいバカやめろ!!砲撃するな!!』


 その仲間の通信を無視し、彼らに火炎弾を放とうとした瞬間、その液体から猛烈な炎が巻き上がり機体の半分を覆いつくしていく。

 そう、樽の中に入っていたのは、油、大量のオリーブオイルである。

 炎を射撃するのなら、油が大量に入った樽をぶつけてやればいい。

 至極単純な理論だが、正しくはある。

 おまけに、こちらには大量の市民が力を貸してくれているのだ。

 その力を借りれば、油の入った樽をすぐに用意することなど容易いことだった。


『あああ!!熱い!熱い!!』


 装甲から内部構造に伝わる高熱により、《サラマンダー・ハーゲン》の内部のパイロットは蒸し焼き状態になってしまう。

 さらによろよろ、と足を踏み出した先は、先ほど外れた樽の油がまき散らされた場所だ。そこに火が移った瞬間、さらに地面と周囲を《サラマンダー・ハーゲン》を完全に包み込んでしまう。

 それはつまり、機体の中にいるパイロットは脱出もできずに蒸し焼きになってしまうということだった。


『ぎゃああああ!!熱い!熱い!助けて!助けて!!』


 その叫びをBGMにしながらも兵士派は吐き捨てた。


「俺たちや一般市民を纏めて焼き殺そうとしてたんだろうが!自業自得だ!そのまま焼けてしまえ!!」


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