第217話 追尾術式魔術VS魔導無人機。
「追尾術式……ですか?」
ちょうど魔術高射砲の整備と魔力カードリッジ作成に辺境伯領に来ていたセレスティーナは、ロングヘアーの金髪を揺らしながらそのルクレツィアの言葉に首を傾げた。
「そうですわ~。竜族たちが空中戦で使用している追尾術式を魔術師用にカスタマイズして使用することはできますかですわ~?
普通の魔術師では竜語魔術を理解することすら不可能ですが、大達人である貴女ならそれも可能なのでは~?」
ふむ、とセレスティーナはその言葉に腕を組んで考え込む。
「まあ、できない事はありませんが……魔術弾の操作は魔術砲台の曲射などでも行っているので。ただ空を高速で飛び回る物体を正確に把握して追尾していくというのは、高度な魔術式が必要になります。
端的に言えば並みの魔術師では扱いきれない物になると思いますが。」
「今はそうかもしれませんが~その内それを調整して使いやすくさせる事を期待していますわ~。」
つまり、安易に「普通の魔術師でも使えるように、しかも正確に狙いを追尾する術式を開発しろ」と言っているのだ。
無茶をいうなぁと思わずセレスティーナも心の中で呟く。
「……。まあ、先ほども言いましたがいきなりそんな使いやすい術式がポンと生まれるものではないですから。使用していくたびに悪い所を改善していって使いやすい物が生まれるのは武器や魔術でも変わりません。とりあえずは作ってはみますが……。」
そう言いながら、魔術カードリッジを魔導高射砲に差し込んで、色々チェックしている彼女たちの元に上空からのっぺりとした前面と翼を持つ比較的小型の機体がこちらの上空を飛行しようとする。
これは竜機の発掘と同時に掘り出された無人魔導機の一種である。
主に偵察用に使われるが、翼に爆薬が込められた砲弾などが搭載され、これを落として爆撃してくることもあるため、油断できない兵器である。
恐らく、空からどんな状況になってるかという確認の強硬偵察なのだろう。
開発されたばかりの防空陣地から弓矢やクロスボウが次々と飛ぶが、高速で飛行している物体に当てるのは中々難しい。
それを見たセレスティーナは、竜骨杖を無人魔導機に向けて詠唱を開始する。
「【ファイアボルト】!!」
その瞬間、セレスティーナの背後に数十もの炎の矢が虚空から構築され、次々と無人機に向かって射出されていく。
今までと異なった攻撃に機体を斜めにして急速回避しようとする無人機ではあるが、それを追いかけるように炎の矢は次々と様々に機動を変えて無人機に襲い掛かっていく。
それに対して、無人機は本来爆撃用の砲弾を数発切り離し、遠心力で後方から襲い掛かる炎の矢にぶつけていく。
炎の矢と砲弾がぶつかりあって凄まじい爆発音が空中に響き渡る。
だが、それによって相殺された炎の矢は数発である。
他の炎の矢はうねるような機動を描きながら次々と無人機へと向かっていく。
さらに機体を傾けて急速に旋回しようとした無人機だが、ついに回避しきれずに、次々と炎の矢が翼や胴体部に突き刺さり、ついにはまだ残っていた翼の砲弾にも命中する。
―――爆発。
砲弾の炸裂と叩き込まれた数発の炎の矢により、無人機は粉微塵に吹き飛んでいった。
「……もう開発されているんですね~。あの術式。」
「ええ、誰も開発していないとは言ってませんから。」
ルクレツィアのジト目に対して、セレスティーナは、しれっと金髪をかき上げながら答えた。
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