第218話 穏健派との共闘
それからしばらく後、シャルロッテは極秘にツテを頼って魔導帝国へと侵入していた。彼女が面会を申し出たのは、魔導帝国の軍部と対立する勢力、穏健派のリーダー、ゾーンという凛々しい青年である。
彼は元々、魔導帝国の重鎮であり、旧帝国のシャルロッテとも政治的闘争を繰り広げた仲だ。そのため、当然シャルロッテの顔は知っている。
秘密の会議室で彼女の顔を見た瞬間、かすかにゾーンは嫌な顔をするが、それでも無碍にするわけにもいかず、シャルロッテに対して話しかける。
「……それで?君が、我々穏健派に肩入れするとかどういう了見だい?お互い不倶戴天の敵だったろう?」
「状況が変わったのよ。お互いもうそんな事言ってられる状態じゃないでしょ。
こちらの旧帝国はもう事実上解体されてるし、そちらは中央から追い出されて穏健派のトップじゃない。お互いぶつかり合ってる余裕ないでしょ?」
彼と彼女は、旧帝国と魔導帝国の際にお互い常に政治的闘争を繰り広げた仲である。
だが、それも以前の話。シャルロッテは旧帝国から竜皇国を立ち上げる大貴族となり、彼も軍部の手で中枢部から追われて穏健派のトップになっている。
魔導帝国の皇帝の片腕ともいえる存在の彼が穏健派のトップに立った事で、その影響で皇帝すら穏健派になり、幅広く国民が穏健派に属するのになったのは軍部の予想外だったろう。
「それより、何でアンタ穏健派なんかになったのよ。あのまま大人しくしていれば、軍部に追放されずに済んだのに。」
「……今のままでは我が国は危険な方向へと向かう。軍部は竜機を国のためではなく私物化し、国内に圧制を強いて外国に侵攻を仕掛けている。
このままでは完全な軍事政権化するのは時間の問題だ。最悪、竜機を失ってでもこの国を取り戻さなければならない。」
強大な力を持った存在が、それを振りかざし圧政に走る。
実によくある話だが、実際にやられてしまってはたまったものではない。
しかも、軍部は皇帝の意思すら無視して独自の活動を行っている。
ここで彼らを掣肘しなければならない、と思ったのだろう。
「まあ、そちらの理屈はどうでもいいわ。ともあれ、敵の敵は味方。
私たちは、アンタたちと手を組んで軍部を倒したい訳。そのために、アンタたちに大量の食糧と武器を供給する。食糧不足のアンタたちには喉から手が出るほど欲しい代物でしょ。」
それを聞いてゾーンは思わず苦笑を浮かべる。
彼もこれを聞いてただ喜ぶだけの存在ではない。
「で、この国に内乱を引き起こしてそちらは可能な限り高みの見物と。全くご立派なことだ。……だが、それでも我々には君たちの力が必要だ。その支援、喜んで受けさせてもらおう。」
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