第166話 大地母神とバアル信仰
「バアル様!我らの村にご慈悲を!祠……いえ、小さな神殿を作りますから!」
「我らの所にもお願いいたします!もちろん竜神殿も併設させていただきますから!」
バアル神の権能、豊穣神としての力は、あっという間に隣の街やその他の村にも瞬時に知れ渡っていた。
何せ崇めるだけで農作物が実際に豊作になる可能性が高いのだ。
そのためになら、祠や小さな神殿を作る程度の事は訳はない。
リュフトヒェンやセレスティーナの手前、竜神殿も併設されるだろうが、明らかにバアル神を崇める信仰の方が大きくなることは間違いないだろう。
つまり、地方、地縁による信仰意識による鎮守神、地主神という存在が近いだろう。
これによって実際に豊作が約束されるのであれば。地方の農村などに豊穣神としてのバアル信仰が根付いていくのは間違いないだろう。
『にゃっにゃっにゃっ。笑いが止まらんにゃあ。持っててよかった豊穣神の権能。
信仰が広まればもっと豊穣神としての権能も復活してくるにゃ。
皆、我の信仰をもっと広めるがよいにゃあ。』
黒猫のバアル神は、その人々の懇願に満足げに頷く。
今まで悪魔として零落されられて、蔑みの目で見られてきた彼にとって、再び神になって人々から憧憬の目で見られるなど、まさに夢のようだった。
だが、それを良くない目で見ている人間もいた。
それは、小型の猫ほどの大きさになっているリュフトヒェンを抱きかかえているセレスティーナだった。
「ぐぬぬ。このままでは人々の信仰がご主人様ではなく、バアル神に取られてしまう……。どうにかならないものか……。」
『まぁまぁ……。ここで信仰を奪い取りにいくとか向こうにとっては死活問題だし。
それに向こうは恵みをもたらしてくれる神、こちらはこの国を治める王といい感じに信仰心が分かれているからいいんじゃない?
問題は、大地母神信仰だよなぁ。』
セレスティーナに喉を撫でられて、気持ちよさそうに喉を鳴らしながらリュフトヒェンは言葉を放つ。
バアル神信仰と大地母神信仰はお互いの豊穣の権能がぶつかり合うのは避けられない所である。
新興のバアル神信仰を大地母神の神殿は良く思わないのは当然であるが、セレスティーナの考えは少し違っていた。
「大地母神信仰は、バアル神を悪魔として落とした至高神信仰に比べてかなり寛容な信仰なので、バアル信仰もただの土着信仰として見られるのでは?
自然信仰、精霊信仰にはかなり寛容ですし。」
自然信仰(精霊信仰)の中で生まれた土着信仰については、大地母神の神殿は非常に寛容な政策を取っている。
いちいちそれらを排斥していては、到底農民の元に信仰など普及しないからだ。
そのため、その地域の土着信仰と大地母神信仰が融合している事も多く存在している。つまり、バアル信仰も意外にするっとスルーされるのではないか、という事だ。
『うーん、竜都の大地母神の神殿から働きかけてみるか。向こうはこちらを取り込みたがっていたらしいし、豊穣の力を実際に震えるんなら、農民と関係の深い向こうの神殿も無碍にはしないだろう。多分。』
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