第14話 新空戦魔術の開発。
リュフトヒェンが超音速を突破しつつある中でも、彼に従う村人(候補)はやるべき事を行っていた。村から調達してきた鍬などを使い、リュフトヒェンが開拓した畑を整え、そこに近くの村から貰った麦の種などを大事に植えていく。
開墾したばかりの畑ではそんなに簡単に収穫はできないだろうが、ここで作物が育てられれば大きな一歩進展である。
そして、その手に入れた種に対して、リュフトヒェンは一つの仕掛けを行っていた。
「あの……。ご主人様。本当に大丈夫なのでしょうか?種を塩水に入れるなどとは……。せっかくの種が死んでしまうのでは?」
そう、それは手に入れた種を塩水に浸して中身の詰まった重い種だけを植えるという方法である。栄養不足の種は中身がスカスカで当然ながら生えてくる穀物も弱いヒョロヒョロした穀物しか生まれない。
そのため、ずっしりとした重い種を見つけるために塩水につけて適度な重さのある種を選んで植えているのである。
だが、塩が植物に対して非常に有害であるというのは、セレスティーナも知っている。
そんな塩水につけてせっかく手に入れた貴重な種が死なないかと考えるのは至極当然である。
『大丈夫大丈夫。我を信じて。ドラゴンウソつかなーい。』
「は、はぁ……。まぁそれなら……。」
その間にも、狩りの得意なエルフたちが獲物を取ってきたり、肉を剥いだ毛皮をなめして加工して自分たちの防寒具へと加工していく。
まだまだ冬までは遠いが、いざという時の寒さに備えて今から防寒着用の毛皮の準備をしておくというのは悪くはない。
そして、リュフトヒェンも近くに川によって、軽めの雷撃を川に叩き込んで気絶した魚を村人総出で取って干物にしたりして食料作りの手伝いなどを行っていた。
ダイナマイト漁と同じく、魚資源が多量に減るという欠点もあるため多様はできないが、たまにならいいだろう、というリュフトヒェンの考えである。
だが、そんな彼らにも大きな問題が存在していた。それはリュフトヒェンと戦ったダークドラゴンの存在である。
『しかし、ダークドラゴンが襲い掛かってきたら、こんな村モドキ、魔術爆撃を受けてあっという間に全滅だよな……。試しに聞くけど、今から地下に避難するシェルターか何か作れない?』
「旦那!?いくら何でも無茶言わないでくださいや!こんな手元に何にもない状態で地下に安全に避難できる部屋を作るとかいくらドワーフでも無理でさ。
言っちゃ何ですが、ここら近辺で上空からの魔術攻撃に一番強いのはたぶん旦那の洞窟だ。山一つ掘りぬいて作られたあの洞窟なら、もう山岳要塞と言ってもいい。
多少の魔術爆撃じゃビクともしませんや。」
『ふむ。なるほど……。分かった。それでは、いざという時は皆ウチの洞窟に避難する、という事で。下手に外の様子とか見に行くと危ないので、そのまま籠っていていいから。』
確かに、リュフトヒェンの根拠地である山岳要塞ならば、対空防御の拠点地としては最適である。いかに竜の火力と言えど山一つ消し飛ばすのは難しい。
竜語魔術による戦術爆撃でも、表面部は吹き飛ばされても内部は問題ないだろう。
やはり、質量による防御こそ正義、という奴である。
だが、それだけでは相手に勝つことはできない。
エルダー級であるダークドラゴンに勝つためには、さらなる新戦術、新魔術が必要になるだろうことは彼も予期していた。そのために、彼は思いついたアイデアを片っ端から地面に爪で刻み込んでいく。
『うーん、多分速度と機動性はこちらは勝てるんだろうけど、それだけじゃ不安だなぁ……。独自の空戦用の魔術とかも開発して相手の意表をつくことができれば……。』
そう言いながら、地面に爪であれこれガリガリと書いて自分の考えを纏めていくリュフトヒェン。
その中でいくつか思いついて、実現可能そうなアイデアをヨシ!と頷いて、セレスティーナへと見せてアイデアを纏めていく。
そのアイデアを聞いたセレスティーナはふむ、と考え込んだ後で言葉を放つ。
「ふむ……。なるほど。確かにこれなら可能なので今魔術式を組み立ててみます。
竜語魔術用にアレンジもしてみますので、これならご主人様もコピーしやすいかと。」
アイデアを聞いて、それをさらっと魔術式を組み立てて魔術として展開できるなど、やはり彼女は魔術師としては天才と言っていい。
通常の魔術師はそんな簡単にポンポン魔術を作り出す事などできない。
しかも全く規格が違う竜語魔術と古代語魔術を把握して、竜語魔術にコピーしやすい術式を組み立てていくとなれば、到底並大抵の魔術師ではありえない。
やはり若くして小達人(アデプタス・マイナー)の位階に到達したのは伊達ではないという事である。
現実では戦闘機はファーストルック・ファーストキル。
見つけた瞬間長距離からミサイルで撃墜するという戦法になっており、ドッグファイト、戦闘機同士の格闘戦などそうそう起こりはしない。
だが、まだ空戦技術も未熟で、ステルス技術なども長距離ミサイルなども存在しないこの世界においては、竜同士のドッグファイトは十二分に起こる可能性はある。
ならば、それ専用の魔術を開発しておけば勝つ可能性は高まる。そうであればほんの少しでもやれることはやっておくべきだろう。
竜同士の戦いで白旗など通用しない。倒されれば命を奪われるか、下手をすればそのまま食われる可能性すらあるのだ。
国を作って平穏な暮らしを作り上げるまでに死んでたまるか。これは彼の素直な気持ちだった。
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