考え中
覚えやすい名前
第0話 幼馴染のバランス
やあ、私の話を聞きに来てくれて、いやこの場合ページを開いてくれて、か、まあとにかくありがとう、歓迎するよ
私の名前はエターナル、いろいろな世界線をつなぐ神をやっている者だ。例えば今君が読んでいる白背景に黒文字で書かれている2次元と君が生きている3次元の境目を管理していたり、地球という世界と全く別の、ただよく似た世界(いわゆる異世界だね)を繋いだりする仕事をしている。同僚の中には娯楽の神様とか概念の神様とかがいるけど、、、
難しいことは分かんないから説明は省くね。仲もあんまし良くないし。
コホン、んじゃ本題に入ろうか、君たちがここに話を聞きに来たってことはまあ兎にも角にも暇を持て余しているからだろう、違う?まあいいや、とにかく君たち3人は選ばれたんだ、異世界に行く人間としてね、え、なに、審査方法?えーっと、ハハッ、気にしないでよそんなこと。とにかく行ってみたらわかるよ異世界に、はいこれルールブック、はいはい、文句とかは受け付けないよ、死人に口無しとはよく言ったものだろ、君たちは死んだんだから黙って神の言うこと聞いてなさい。バタンッ
「では、いってらっしゃい」
ふーっと今日のノルマは達成かな、・・・・・あれ、まだ読んでたの君、物好きだね?でも、そろそろ本編始まっちゃうからお別れだね。大丈夫そのうち会えるさ。
んじゃまあ次の行から語り部変わっちゃうから気を付けて!
※
春である、季節は冬を過ごして春へとその姿を変えていっていた。春は良い春が好きだ。
「春、お前のことが、、好きだ!」
「!?」
「もう、止められない、この気持ち受け取ってくれ!」
「私も!」
二人は熱いハグをして手を繋ぎ結婚して幸せな日々を送ったのだった。めでたしめでたし
「人間というのは不思議なもんで朝の方が頭が冴えていて、夜になると判断力が鈍るらしい。俺も衰えた者だ、朝だというのに冴えない顔をしてこんな原稿を読まされるなんて」
「そこまで俺の感想を的確に表現することができるのなら、もっとマシな文章を持ってこい」
深い深いため息というのは案外音が出ないもので、それでも音が聞こえるというのならそれは明らかに嫌味を相手に伝えようとするが故のわざとである。
十年来の友人こと瑛太《えいた》は原稿をくしゃくしゃに握り潰しながら努めて笑顔で聞いてきた
「もしかして俺こんなもの見せられるために呼ばれたの?」
ならばこちらも笑顔でなければ無作法というもの
「ああ、そうだ」
あたりはすっかり氷点下、春は暖かいはずなのになんでなんだろうねぇ
「ふーーーーーー(クソデカため息)」
「瑛太、そのコーラは熱くないぞ」
「ふーーーーーー(怒りを鎮めている)」
「いやだから、熱くないって」
僕らは今ファミレスにいる、というのもまあ、高校生の夏は暇だから友達誘って自主映画でも作ってみようじゃあないか、ってな話になって、野郎と少しばかりの女の子を誘い集まってはみたものの、これが見事に馬鹿ばかり。
唯一の才女である、隣のこいつは腐女子であるため論外として、脚本を書けるやつが一人もいなかった。それでおはちが回りに回って試しに一人ずつ書かしてみたところ、、、、
最後が僕だったってわけ。
「お前読書経験は?」
「最近数えたら蔵書が500冊越えてたね」
「漫画は除けよ」
「18冊」
「画集も」
「17冊」
「このすば って本編だけだと何巻までだ?」
「17巻です」
「このっバカ」
「なにおっ?ラノベは本じゃないってか?やんのかテメェ」
「ちげーよラノベも本だよ、少なくとも500冊漫画読んでるくせになんで物語一つ書くことが出来ねーんだよ」
僕はさっきから冷や汗が止まんなかった。もしかして冷房効きすぎなのでは?寒すぎて私サムスンになっちゃうよ?
僕は瑛太の眼光から隠れるように隣の才女こと桜に目線を移動させる。
あー、こっちもだめだ、ファミレスまでの道中で立ち寄ったメロンブックスで買ったBL本読んでるわ、君が座ってる方通路側だからそういうことするのやめてほしいな、俺らまで同類だって思われたらたまったもんじゃない。僕は百合好きだからね。
「とりあえず場所変わろうか」
親切心というより危機感と治安維持のために僕は桜に声をかける
「いや、いい」
「変われ」
断るな。お前は危険だ。
「あと、ファミレスでBL本を読むな、ファミレスでBL本はタブーや」
「私から腐女子を取ったらなにが残る?」
「美人?」
「ホンマそれな、私もそう思う。」
お世辞だバーカ
そこから桜と取っ組み合いの喧嘩をし始めること数分
「俺は帰っていいか?」
だめだよ何言ってんだよ、だめだよ
「なんでそもそも俺がお前らの自主制作映画につきあわにゃならんのだ、お前らだけでよろしくやってりゃいいじゃねーか、俺は俺で明日彼女とデートがあるから今日は美容院の予約があるんだ本題に入らないんだったらいい加減帰るぞ」
その言葉を聞いて僕は我に帰った、が、ふつふつと湧いてきた怒りで我をまた失った。
「なんだと貴様、彼女なんか作っていやがったのか、道理で最近付き合いが悪いと思った、せっかく映画作りに誘ってやったのに、相手は誰だ?美波か?渡辺か?ええいまどろっこしい全員に電話かけて確認してやる」
携帯を取り出してライン電話を開く、だがその手を真正面から掴みかかられ今度は瑛太と取っ組み合いの喧嘩を始める
「全員に迷惑かける方法を選ぶんじゃねぇこのバカが、死んでもお前には教えてやんねーよ」
「貴様貴様貴様貴様貴様きさまぁぁぁーーーー、俺だって彼女なんて出来たことねーのに」
「よしてよ二人とも注目の的じゃない」
「うるせー、本当にそう思ってるなら俺らをみて涎垂らして恍惚な顔してんじゃねー」
※
結局瑛太は帰ってしまった。なぜだろう。
「あんたが喧嘩し始めたからでしょう」
桜はあきれた顔でこっちを見る。
「だってあいつに彼女だぜ?俺ら3人幼稚園から一緒なのにどこで差がついたんだろうな」
「さあね」
さっきから冷めた顔をしているが俺は桜が瑛太のことを好きなことを知っている。ついでに言うとさっきから仕切りに携帯を取り出してラインを打っていることにも気がついている。
「気にすんなよ、うん、あとは俺たちがあいつ縛り上げて吐かせるからさ」
「まあ、興味はないけれど、幼馴染としてその時は私も呼んで」
「そいじゃ今日はとりあえず目標は達成したし、会計して帰るか」
目標(瑛太に脚本作業を押し付ける)をなんとか達成させていた僕らは会計を済ませて店を出た。もちろん帰り際に出禁を食らった。3人とも
「明日どうする?」
帰路の途中、日もまだ全然てっぺんだけど話すこともないので聞いてみる
「そうね、瑛太をストーキングするのに忙しいから明日は参加できないわ」
「あー、ふーん」なにそれ面白そう、俺も行こ
「あっそういえば映画の小道具に古い本が欲しいって達也が言ってなかった?」
「そういえば、確かにそう言うことを言われたような気がしてきた。あの古本屋寄ってくか」
「世界堂」
その古本屋は僕らが生まれる前、おじいちゃんおばあちゃんが子供の頃から存在しているなぜか潰れない店だった。面白がって瑛太と僕と桜は幼少期からここに通っているが、ここに客が入っているところを見たことがない。でも店主のおっさんはいつも優しいし毎週ジャンプを無料で読ませてくれるので実質チャラだ。
「おーっす、たけさーん遊びに来たぜぇ」
いつも通りガタガタうるさい音をたてながら開くドアを通り僕らは店内に入る、中は二階建て、そこら中本棚と本で溢れかえり足の踏み場もままならない。
「よー、きたか」
奥の方から両手に本を重ねたこの店の店主ことたけさんが顔を出す
「って桜ちゃんと二人っきりじゃねーの、どうした?デートか?っち、興醒めだ帰れ帰れリア充が」
これもいつも通り。桜はものすごく嫌そうな顔をした、俺もした。
「うるせー、あんた美人な奥さん連れといてなにがリア充だ」
瑛太の説によるとここが潰れない理由の一つは奥さんがめちゃくちゃ稼いでいるか。めちゃくちゃ裏と繋がっているからではないか?と、僕はそうは思わないけれど。
それはともかく、何冊かそれっぽい本見繕って帰りますかね
「んじゃ俺二階見るから、桜は一階な」
「いいよ」
「お互い3冊集めたらここに集合、ヨーイドン」
合図と共に僕は本の海をかき分けて梯子を登り二階に登る
ギイィィ
「ヒッ」
・・・・・かなり年季の入った建物なだけあって心臓に悪い音が歩くたびに聴こえてくる
これは桜に一階任せて正解だった、ほぼ毎週ここにきている僕でもあんまし二階には来ないからなぁ、、、、これと、これ、、、と、いやー、こっちも雰囲気あるなぁ
気づくと僕は結構奥の方まで進んでいた。手元には表紙だけではなんのこっちゃよくわからないインテリアみたいな本が2冊、あと一冊かー、、、、、、うん?
それが視界に入ったのはたまたまだった。だが出会ってしまった、なぜか目が離せないその本には力が宿っていた。
「転生書新訳版?」
文庫本より小さいくらいで、厚さで言うと人間失格ぐらいの厚さのその本は、何故だか僕の心を掴んで離さなかった。思わず本棚に手を伸ばす、バチッ、!?、静電気?湿気の多いこの店で静電気が起こるなんて考えにくいが、確かに本を触る瞬間僕の手には電流の流れる痛みが走った。??・・・・気になるな。もう一度恐る恐るその本に手を伸ばす、だが次は普通に引っこ抜くことが出来た。
「これは個人的に買うか」
そのままポッケに突っ込んで足元に落ちていた分厚い本を3冊目に迎え入れ僕はその場を後にした。
「なかなかいいチョイスね」
「チョイス、、、」
下に降りると早めに会計を済ましたのか、たけさんと一緒にお茶を飲んでいる桜がいた。
羨ましいな俺もお茶が欲しい。そう言うと桜が飲みかけの湯呑みを僕に渡してきた、ありがたくいただいておこう。喉乾いてたし。しばらく3人で世間話をして過ごした。
「そろそろ帰るか」「そうね」
そんなに長居したつもりは無いのだけれど気づくと時刻は四時になっていた
「ん?帰るのか?じゃまたなぁ」
たけさんに手を振りつつポケットの中の本の存在を完全に忘れていた僕はそのまま店を後にした。
その日の夜世界堂は大火事に見舞われ長い歴史に幕を閉じた。
考え中 覚えやすい名前 @daigodaisuki007
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。考え中の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます