第30話 嘘だろっ!?
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タイトル→「地下鉄で美少女を守った俺、名乗らず去ったら全国で英雄扱いされました。」
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――――――
「ゆ、友里があの時の女の子だったのか……」
「急にそんなこと言われても信ぴょう性なんてないよね。でも私覚えているよ、涼と過ごせたあの短い間を。一緒に山に行ったよね。川にも行ったよね。ゲームをして遊んだよね。お花畑で約束を結んだよね……」
次第に友里の声が弱くなり震えてきた。
そしていつの間にか……。
友里の目から涙が溢れ返っていた。
ポロポロッと涙が、彼女の頬から滑り落ちる。
「友里、どうしたんだ急に泣き出して。嬉し泣きとはちょっと違うよな?」
俺の言葉を友里は返さなかった。
ただ下を向き、すすり泣いていた。何故急に泣き出したのかは分からない。
だけどこの表情を見る限り、何か苦しいことがあったのは確かだ。
見ているこっちまで悲しくなる。
「友里、どうしたんだ? どうして急に泣くんだよ。せっかく再会できたじゃないか」
数秒間黙り込んだ後。
友里は顔をくっと上げ、大粒の涙を流しながらこう言いだした。
「あの時、私は涼にお別れの挨拶を言えなかった! 助けて貰ったのに何もできなかった! 何も言えなかった! ずっと……。ずっと涼に会いたかった……」
自身の手を強く握りしめながら、友里はその後も続けた。
「ごめんなさい……。あの時助けてくれたのに、ありがとうも言わずに去って行ってしまって……。私のせいで涼が死んじゃうと思って、つい逃げてしまった。それが心残りで、ずっと苦しかった。本当にごめんなさい……。恨まれてもおかしくない。でも、それでもしっかりと自分の想いを伝えたかった……」
ああ。
そうか。友里が泣いている理由がようやく分かったよ。
感動の再会にも関わらず、苦しそうに泣いていたのは……。
事後直後、こつぜんと姿を消したことに後悔していたからなのか。
あの時のことは、正直はっきりと覚えていない。
目が覚めたら病院の中にいたからな。
それに意識がはっきりした時、既に数日経っていた。
友里がいなくなっても、何1つ不思議ではない。
苦しみながらも必死で言葉を出す友里に対し、俺はそっと言葉をかけた。
「友里、泣かないでくれ。俺は別に恨んでなんかいないよ。短い間だったけど、友里と一緒に遊べた思い出は今でも大切にしている。友里とこうして再会できて、俺は心のそこから嬉しい」
「ど、どうして……。だって私は逃げ出したんだよ! 命の恩人なのに、ありがとうも言わずに、怖くて逃げだした……。本当は私のことを恨ん」
「それだけはない!」
友里が言いかけた時、俺の口が勝手に動いてしまった。
無意識に。突然と動いてしまった。
「目の前で友達が死にそうになってて、何もせずに見ている方がおかしいだろ! 俺は俺のやるべきことをやった。それで肩に傷ができた。でも後悔なんてしていない! 奇跡的にも後遺症が残らなかったけど、例え腕1本失っても、その想いは変わらない。俺の腕1つで友達の命が救えるなら、俺は迷わず捨てる」
「で、でも……。ど、どうして恨まないの……? だってだって……」
「助けたくて助けたのに、どうして恨むんだよ? 友里に大けがが無かったのなら俺はそれでいい。無事でよかったよ」
「ほ、本当に恨んでないの? 許してくれる?」
口がガクガクと震えながら、さっき以上に涙が溢れ出す友里。
見ただけで分かるよ。苦しみながら泣くこの姿を見れば分かるよ。
友里がどれだけ長い間後悔をしていたかなんて。
言いたくても、会いたくてもできなかった。
その想いが何年も何年も積み重なって、ようやく今解き放たれたんだ。
泣かずにはいられないよな。
俺は一歩、また一歩っと友里に近づき、そして。
優しく抱きしめた。
彼氏でもない男がこんなことをするなんて、気持ち悪いかもしれない。
でも俺が本当に恨んでいないことを証明するには、これしか思いつかなかった。
「友里、もう気にするな。いつもの元気いっぱいな友里に戻ってくれ。また一緒に遊ぼう。だから……、自分をこれ以上責めるな」
俺の胸の中で、友里は小さくこう言った。
「ごめん涼……。本当にごめんなさい……」
「お前の気持ちは十分伝わった。だからもう謝るな」
「……うん」
友里は小さく細い腕を俺の腰に回し、ギュッと抱きしめてきた。
そして友里はそのまま小声でこう言いだした。
「ありがとう涼……。本当にありがとう」
数秒間抱きしめた後、友里はそっと手を放し俺の胸元から離れた。
今の彼女の表情を見てみると、目が赤く腫れているが。
涙は止まり、苦しみに満ちていた表情はどこか彼方へと消えていた。
「もう十分な泣いたか?」
「うん! もう大丈夫! ずっと言いたかったことを言えたし」
「そっか。ならよかったよ。にしても、まさかあの時の女の子が友里だったとは。全然気が付かなかったよ」
俺がそう言うと、どこか嬉しそうにしながら友里はグッと距離を詰めてきた。
「どう? 私変わったかな? あの時の約束果たせたかな?」
この言葉に、俺は即答した。
「ああ。すっごい可愛くなっているよ。可愛くなったら、友里」
「ありがとう、涼。ふふっ」
最後に可愛らしい笑みを見せる友里。
その顔を見て、俺は安心した。もう心残りはないだろう。
友里の心を縛っていた鎖は立ち切れたな。
「よし! 肝試しの続きをするか! 早く行かないと、コースから外れたことが先生にバレちまう!」
「うん! そうだね! 行こう!」
互いに前を向き、暗く細い道を共に歩き出す。
まだまだ距離はありそうだが、楽しく話しながら進むか。
そう思った時。
隣を歩いていた友里が、俺の手をそっと握りしめてきた。
「え?」
突然の出来事に、思わず俺は動揺した。
友里の方を見てみると、顔を真っ赤にしながら視線を逸らしていた。
な、何だ?
どうして急に手を?
「も、もしまた再会できたら、こうしたかった……」
「ん? 今なんて言った? 声が小さくて聞き取れなかった」
「べっ、別に気にしないで! ちょっと怖くなったから握っただけ。嫌だったらはなすけど」
「そういうことだったのか。なら別に良いよ。俺は気にしない」
何て言ったのか聞き取れなかったけど、まあ気にしなくてもいいか。
俺は小さく柔らかい友里の手を握りながら、2人寄り添いながら山道を歩いて行った。
―――
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1話の伏線を回収したが、気が付ている人はどれぐらいいるのだろうか……?
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