地下鉄で美少女を守った俺、 名乗らず去ったら全国で英雄扱いされました。「スニーカー文庫から発売中!」
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第1話 嫌な予感
とある2月の上旬。俺——
第一志望は、私立
この高校は、政治家や大企業の社長の娘が多数在籍している。
そんなお嬢様たちが集まるこの学校だが。
俺が入学する年からなんと共学になった。大学の進学実績は日本有数。おまけに設備も整っている。
何としても合格したいが、結果は神だけが知っている。どれだけ願った所で未来は変わらない。
試験が終わった今も緊張しているが、長かった受験生活がやっと終わったんだ。
息抜きでもしよう。
受験会場を後にした俺は駅へ向かわずに、時乃沢高校の近くにあるゲームセンターの音ゲーコーナーに足を運んだ。
超久々だな。約1年ぶりの音ゲーか。
俺は台の前にたった途端、財布から金を出しすぐさまプレイ開始。
いやぁー、楽しいな。何も変わってないな。やべぇー。超楽しい!
俺は次々と100円をゲーム機に投入した。いくら使ったのか分からなくなるほど、
一人で大熱中してしまった。
そんな俺が気になったのか、隣でプレイしていた女の子が、
「へぇ~、君凄い上手だね!」
横から声をかけてきた。
突然話しかけられたので振り返ってみると、私服姿の女子がそこに立っていた。
青みがかった長い髪の毛に、スラッと引き締まった体。加えて身長が百六十センチ後半はある。女子の割に身長が高く小顔でスタイル抜群。しかも結構胸もある。
パッと見た感じだと、多分俺と年は近いと思う。
さすがに無視するのは気まずいし、適当に返事でもしておこう。
「こう見えても結構歴長いからね」
「なるほど~、そうなんだ。私さ、小学生の時に音ゲーに出会って以来、凄い好きでハマっているんだ!」
意外だ。いかにも陽キャラ感漂うこの人が、音ゲーに熱中しているとは。
「君凄いね。ほぼミスなしじゃん。私なんてフルコンプするのが大変でさ~」
「最初は皆そんなもんだよ。慣れればすぐフルコンプできるよ」
「え~、本当? 2年近くやり込んでいるんだけどさ、中々全国ランキング上位に行けなくて。何か上手な人が1位から3位全部独占しているんだよねー。凄いよね」
「へ、へぇー。そんな上手な人がいるんだ……」
あ、それ俺だ。絶対俺だよ。
帰宅部の特権を活かし、放課後はずっと音ゲーをやってたもんな。最初はランキング外だったけど、徐々に上達していつしかトップを独占するぐらい上手くなっちまった。
いつしか音ゲーマスターの称号まで手に入れちまったし……。
まあその情報は伏せておくか。自慢するのは好きじゃないし。
「私はエンジョイ勢だからあんまりランキングは気にしないんだけど、世の中には凄い人がいるもんだねぇ~」
「そうだな。にしても君、珍しいね。年頃の女子は仲良しグループでプリクラ取るのが普通だろ? 音ゲーやってる女子って少ない気がする」
「そうなんだよね~。皆音ゲーとかやらないから趣味友が少ないのよ。プリクラとか取るのも楽しいけど、共通の趣味友が欲しいな~。サンタさんに頼めばくれるかな? 」
「何ヶ月後の話だよ……。今2月だぞ」
サンタさんに趣味友が欲しいなんてリクエストしたら、親が可哀そうだぞ。
それにしても、ぱっと見た感じだと、中学生か高校1年生っぽいな。
青髪は地毛か? そんな訳ないか。見るからにハーフでも外人でもないし。
無意識に青く綺麗な長髪を凝視していると、
「ああ、この髪気になる? 私が通ってる学校は規則が緩いんだ。髪染めなんて全然オッケイ。だからこうしてるの。ねね! 私今日暇だからさ、対戦しようよ」
「対戦?」
俺が今プレイしている音ゲーは1人でも複数人でも遊べる機種だ。高得点を取った方が勝ちという、いたってシンプル。でも、対戦何て久々だな。音ゲーマスターの腕はどこまで鈍っているかな。
「超久々だな。オッケイ。望むところだ」
「やった! いや~、実を言うと今日凄く暇でさ~。私の学校が入試で休みなんだよね。部活もないし親友も入試の手伝いに行ってるから、退屈だったんだよ~」
「へぇー、今日君の学校入試なの?」
「うん! 去年より志願者数が多いらしいよ」
待てよ。ここら辺で今日入試がある学校と言えば、時乃沢高校ぐらいしか思いつかん。
と言う事は、この子はまさか時乃沢の生徒か?
だとしたら色々と合致する点があるぞ。
「もしかして君の学校って、時乃沢?」
「そうだよ! 入試だから今日休みなんだ。あ、でもよく分ったね!」
「まあね。俺ついさっき試験受けて来たからさ。直感的にそうなんじゃないかって」
俺の言葉を聞いた途端。青髪の子は目を大きく見開き、驚きのあまり声を大にした。
「うっそ! 本当⁉ お疲れ様! まさか私の学校を受験してくれてたんだ。そうだよね、今年から男子も受験できるし」
「君は、中等部の子なのかな?」
「うん! 今中学3年生だよ。だからもし君が合格すれば、私達は同級生になれるね」
「すごいな。まさかこんな偶然があるとは」
「いや~、音ゲーから始まる出会いもあるんだね~。それに何故か君とは初めて話した気がしないんだよね~。まあそんなことはどうでもいいか! ささ! ここは今までの受験ストレスを全て発散しましょう! 私がお金を全部出してあげるから!」
「ええ⁉ さすがにいいよ」
「いいから、いいから! やりましょうか!」
と、遠慮したが、青髪の子の熱意に負けてしまい、結局俺の分まで払ってもらった。どうやら受験で疲れた俺に少しでも貢献したいらしい。
俺は懐かしい気分を味わいながら、青髪の子と1時間ほど音ゲーに熱中してしまった。
○○○○
あれから1時間後。
青髪の子は、他に寄る場所があるとのことで、ゲーセンでお互い解散。さすがにもう寄り道はせず、今地下鉄のホームで電車を待っている所だ。
初対面だったにも関わらず、あの子のコミュニケーション能力が高くて、友達感覚で話すことができた。
でも名前聞くの忘れてた。何してんだよ、俺。
受験の緊張と音ゲーの余韻に浸っていると、ようやく俺が乗車する電車が姿を現した。
扉が開くと同時にすぐさま車内に飛び移った。
電車内は空いていて、所々席が空いている。俺はその内の1つにずっしりと重い腰を下ろし、座り込んだ。瞼を閉じて深い睡眠に入ろうとした時。
向かいの席に何とも可愛らしい少女が座っていた。
長いまつ毛に、クリっとした可愛らしい目。スマートな体型と真っ白な肌に、サラサラとしたや絹糸のような長髪が、清楚さを醸し出している。
それにこの制服って。
時乃沢高校の中等部のだ。何でこんな時間に。部活は入試でないだろうし。
いやにしてもこの子……。
モデルに負けず劣らずの容姿だな。滅茶苦茶可愛い……。
このままもう少し見つめていたいが、さすがにちょっと疲れた……。
車内は暖房が効いていて温かいし、適宜に揺れる。まるでためゆりかごの中にいるみたいだ。
やばい、瞼が自然と下がってきたな。
徐々に視界がぼやけ始め、そしてついに。
俺は静かに深い眠りに入った。
念のためにタイマーはかけてある。降りる駅まで、ちょっと眠るか……。
こうして俺の高校受験が本日終わりを迎えた。
あとは合格通知書が来るかどうか。ドキドキしながら結果を待つのみ。
のはずだったが……。
俺が眠っている間にまさかあんなことが起こるなんてな。
受験を終えた日に地下鉄通り魔に出くわすなんて、誰が想像できる?
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