異世界へとたどり着く 04

「魔法は魔法ですよ?」

 少女はキョトンとした様子で答えた。

「魔法って魔法なのか……」

 楓は自分でも訳の分からない事を言ってることは、分かっていた。

「ふっ、ふふふふ」

 頭の中が混乱しそうな楓を見て、少女は笑いだした。楓は笑う少女を見るしか出来なかった。

「あ、ごめんなさい。あまりにも可笑しなことを言うから、つい笑っちゃいました」


 自分の言ったセリフを思い出すと、確かに意味不明過ぎて笑えるな、と楓も納得した。

「ちょっと色々とありすぎてな。別に笑ってくれて構わないぞ」

 少女を楽しませる気は無かったが、意図せずそうなってしまったのは、ラッキーだと思ってしまう。

「私、メディって言います。森には薬草を取りに来ました」

 メディは地面に置いていた籠を持ち上げて、楓に見せた。その流れに準じて、楓も名乗る。


「越宮楓だ。森には……なんで居るんだろうな……」

 楓はようやく、なぜ自分がここにいるかに疑問を持った。

「……もしかして、なにかお困りですか?」

 メディは楓の様子から、経緯は分からないが困っている、と察していた。

「そうだな。うん、今俺めっちゃ困ってる」

 自分の状況を俯瞰で見て、すぐにメディの言葉に同意した。


「じゃあ家に来ませんか?」

「え!?」

 突然の提案に楓は驚愕した。こんな少女が今初めて会った男を自宅に誘うとは、危ない奴だったら大変だぞ!っと、楓の老婆心が色々と心配した。

「……メディ、これからの人生の教訓になればいいと思って言う」

「は、はい!」

 突然改まる楓に、メディは背筋をピンッと無意識に伸ばした。


「初めて会った男、しかもこんなオジサンを家に入れようとしてはダメだ。危険な奴の方が多い……と思うからな」

 説教っぽくならないように楓は言葉を選びながら、メディに伝えた。しかしメディは、納得するどころか、首を傾げた。

「……おじ、さん?」

「そう、俺みたいなオジサンだよ。自分で言ってて悲しくなるけど……」


 自分で自分の事をオジサンという度に、心の中のヒットポイントが減るようなイメージを楓は感じていた。

「あのー、おじさんってエツミヤカエデさんの事ですか?とてもそうは見えないんですけど……」

「……そんなこと言われたの初めてだよ。お世辞にしても嬉しいよ」

 メディのお世辞の言葉に、楓の心のヒットポイントは回復した。


「あの、家に物知りなおじいちゃんが居るので、きっとエツミヤカエデさんの力になると思うんです」

「……あー、そういうことな。じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな」

 勘違いをしていた楓は自分の考えが恥ずかしくなった。メディは勘違いしていたことには全く気付いてない。

「エツミヤカエデさんが良ければもう家に向かいますが、どうですか?」


 何度もフルネームで呼ばれるので、楓の中で煩わしさが生まれていた。

「森に用は無いから大丈夫だよ。それと、楓でいいよ。フルネームは長いし、名前呼びの方が短いしな」

「分かりました!ではカエデさん、行きましょうか」

 メディを先頭にして、楓達は歩き出した。

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