突然ですがエロ漫画家の義母と義妹が出来ました〜おまけにヤンデレ元カノが復縁を迫ってくるんだが?〜

ふぃるめる

第一話 義母はエロ同人誌作家でした

 我が大月家に今日、新しい母親とその連れ子がやって来た。


 「悠哉ゆうや、こちらがお前の義母ははになる――――」


 親父がそう切り出すとその言葉を遮った義母は


 「甘姦かんかんむすめですぅ〜。で、こっちが私の娘の雪菜ゆきなだよ〜」


 ん?俺は今、トウモロコシか何かの自己紹介を聞かされてるのだろうか……?

 (甘々娘という品種のトウモロコシがある。美味しいから食べてみてね)


 「ちょっと、お母さん!?初対面の人にそれはダメだって!」


 雪菜と呼ばれた俺と同じぐらいの歳の女の子がトウモロコシ(仮)を咎める。


 「あら、やだっ!私ったら……えっと自己紹介やり直していいかしら?」


 トウモロコシ(仮)は、俺に向き直ると言った。


 「あ、どうぞ……」


 俺は、初手から予想以上のぶっ飛びぶりに呆気に取られた。

 一方の親父おやじはトウモロコシ(仮)の方を微笑ましそうに見つめていた。

 親父は、初めてこの人に会ったとき、面食らわなかったんだろうか。


 「改めまして本名は稲原いなはら佳奈かなです〜」


 俺はなんとなくこの義母がどういう人かを察してしまった。

 おそらくさっきの名前は、ペンネームか何かなのだろう。

 

 「失礼かもしれないですけど、ご職業は何を?」

 「お、これはAVシチュ――――もごもご」

 「お母さんストップゥゥゥゥゥッ!」


 何かを言いかけたところで義母の口を雪菜が手で覆う。

 

 「折角の再婚の機会がまた台無しになっちゃうよ!?」

 「しーっ!それを言っちゃダメっ!ほら、悠哉くんの私を見る目が、母としての尊厳がっ!」


 あー、多分この人……ぶっ飛び過ぎてて今まで上手くいかなかったんだろうなぁ。


 「大丈夫、ちゃんとヤバいところは濁して言うからね?ね?」


 雪菜に確認を取るように佳奈さんは言うとコホンと咳払いをした。


 「悠哉くん、私の職業だったよね?私の職業は泣く子も黙るエロ同人誌作家よ!」


 えっへんと豊かな胸を張って佳奈さんは言い切った。

 泣く子も黙るって……多分それ、驚きとか動揺とかだと思うぞ。


 「どこが肝心な所を濁すよぉぉぉぉっ!」

 「え、ジャンルまでは言ってないよ?セーフセーフ」

 

 にゃぁぁぁぁっと飛びついた雪菜をヨシヨシする佳奈さん。


 「エロ同人描いてるって言っちゃってるじゃん!」

 「( ゚∀ ゚)ハッ!確かに!」


 雪菜を見ていた佳奈さんは、俺の方に不安そうな視線を向けた。

 無言の問いかけになんて答えたらいいんだろうか……。


 「じょ、女性の社会進出としていいんじゃないすか?」


 ぱっと思い浮かぶ肯定する理由がこれくらいしかない。

 というか、これはまるで性の社会進出だ。


 「そ、そうよ!うんうん!ほら雪菜、悠哉くんもいいよって言ってくれてる!良かったぁ〜ママ、幻滅されるかもって思って……」

 

 そう言うと言動とは裏腹に佳奈さんは紙袋をゴソゴソと漁り出して一冊の薄い本を手渡した。

 

 「粗品ですが、受け取って貰えると……」


 おずおずと佳奈さんが差し出したのは……『義妹とイケない禁断イチャラブS〇X』と、でかでかとタイトルが書かれた薄い本。


 「おぉ、パパの一番好きな作品……」


 親父は、その表紙をうっとりと眺めて言った。

 はっきり言って親父のオカズ事情とか知りたくなかった……。


 「私の自信作でもあるしとおるさんのお墨付きも貰ってるから〜読んでみてね?」


 ニコッと人好きの笑顔を浮かべる佳奈さん。

 あんたは高校生になんてものを手渡してんだ……。


 「ちょっ、お母さん!?これ、年齢指定あるやつ!私達高校二年生だよ!?」

 

 佳奈さんの胸ぐらを掴んで揺する雪菜。


 「だって……お母さんの仕事を知って欲しいんだもの……」


 消え入りそうな顔で雪菜に向かって佳奈さんは言った。

 背表紙には、甘姦娘と書かれている。

 字面がひでぇ……なんか意味成立してて上手いのが余計に腹が立つ。

 さっきまでトウモロコシの品種の名前かな?とか考えてた俺を叱ってやりたい。

 あ、でも漢奸かんかん男娘むすめとかよりはマシなのか?

 突然みせられた予想の斜め上を行く事態に俺の頭の方もついて来れていないらしいのか、思考がどんどん変な方向へと進んでいく。


 「そんなこと言ってもダメなのはダメなのっ!」


 雪菜は俺から引ったくるように『義妹とイケない禁断イチャラブS〇X』を取り上げた。

 

 「むぅ〜じゃあお母さんの仕事をどうやって見せたらいいの?」

 

 唸りながら腕を組んで考える仕草の佳奈さん。

 やがて何かを思いついたのか、


 「徹さん、DVDプレーヤーある?」

 「あるよ!」

 

 親父の答えに小さくガッツポーズをすると佳奈さんは、再び袋を漁ってピンク色のDVDケースを取り出した。


 「それもダメーっ!」


 俺に渡そうとしたDVDケースを横から雪菜が攫っていく。

 危うく家族四人でエロアニメ鑑賞会になるところだったか……。


 「それなら!」


 ノートパソコンを取り出した佳奈さんは画面にあるものを表示させた。

 タイトルが、これまた卑猥だ。

 『義妹がねっとり囁く射〇管理』……さっきから何故に義妹モノばっかりなんだ……?


 「バイノーラル録音で優れもののASMRなの」


 ナニに優れてるかは言うまでもない。

 佳奈さんは、マウスに指を掛け再生ボタンを押す。


 『お兄ちゃん、ちゃーんと我慢、したんだよね?一人で―――――』

 「それもダメだってぇぇぇぇっ!ぜぇぜぇ」


 またしても雪菜がバイノーラル録音の効果が遺憾無く発揮され、核心を突く場面に入る前にマウスを奪って音声を止めた。

 こうやって二人を見ているとどっちが母で娘なんだかわからなくなりそうだ。

 終始こんな調子で家族揃っての顔合わせは幕を閉じた。

 このとき、佳奈さんが俺に渡したものが全て義妹モノばっかりであったことを何も気にせず後から後悔をすることになるのはまた別の話――――。

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