「Sköll Hati」

胡蝶花流 道反

第1話

星が見える

部屋の中、なのに星がみえる

開けた窓からとか、硝子張りの天井から、とかではなく

目線を動かす毎に、壁や天井の向こう側が透けるように外が見えるのだ

キラキラと瞬く星、そして見事な満月

あの月が指定の場所に来た時、私は出発する

「彼」を探しに行く

真夜中にしがみついたままの「闇の私」とは交わることのない「光の彼」を



 暗い森を抜ける。敵を斃しながら駆け抜ける。10体以上は斃したか。

 森を出てすぐ、湖が見える。夜の湖は黒い水を湛え、そこはかとなく恐怖を感じる。だが、湖面に映った月は美しい。今ならば対話が叶いそうだ。

「月よ、今こそ私と一つになっておくれ。さすれば、彼と会う事が実現するのだ」

 月は応える。

「今より刻が3つ動くまでに、古の花を水面の月に捧げよ」

 花といっても自然に生えている植物ではなく、山中の切り立った崖の上で採掘して採れる、とある鉱物の別名らしい。それは先人の知恵を調べて知った。当然、急いで行かないと間に合わない。暗い夜道をひたすら走って先に進む。

 中腹の、開けた場所に出た。頭上には美しい星空、ぐるりと見渡すと月の姿も確認できる。すっかり馴染んでしまった、この風景はとても好きだ。昼間よりは夜の方が好ましいと思っているし、この一面の夜空に包まれた真夜中の世界の尊さよ。

 いや、今は急がねば。


 何とか古の花とやらを手に入れて、月に捧げる事が出来た。だが、月の要求はまだ続く。様々な趣向を凝らした無理難題で私を苦しめる。解いても解いてもキリがない。次は幾つかの石を使ったパズルを解け、と言う。今回は時間制限の無いクエストのようだが、しかし全く解らない。何の法則性も掴めず、勿論ヒントなんて無い。もうずっと、真夜中の闇から抜け出せていない。もうこれ以上、先には進めそうにない…

「あーーー、もう無理!こんなの、全然わかるわけね-だろ!」


 すぐそばに置いてあったスマホから、着信音が鳴った。

「もしも~し。今?丁度ゲーム止めたとこ。だからヒマ、ゆっくり話せるよ。でさ、そのゲーム、フリゲ漁ってたら見つけたヤツでさ、何かめっちゃ難いの!まだ誰もクリア出来てないから、頑張って一番乗りしちゃえってプレイしてたけどさ。ぜんっっぜん、ダメ。ムリムリ、無理ゲー。」

 くそっ、真っ先にクリアして名を馳せようとした私の目論見は、泡と消えた。

「えー、やってみたいって?いや~、やめといた方がいいよ。え、気になるから教えてくれって?」

 えーと、何てタイトルだっけ。

「……名前が読めねえwww」

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「Sköll Hati」 胡蝶花流 道反 @shaga-dh

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