第44話 頂上決戦

 ゼノたちとキルバスの戦いが始まった。


 まずミエーカがキルバスの真横へ瞬間移動して、黄金に輝く聖剣を振り下ろす。

 それをキルバスは闇の魔力で作った剣で受け止める。

 衝撃で町全体が揺れる。


 そこに畳み掛けるテラス。

 キルバスに殴り掛かる。

 さらにゼノも瞬間移動でキルバスの真上に飛んで、五属性を融合した魔法を放つ。

 それは、あらゆる物を消滅させる圧倒的エネルギーの塊がビーム状に放たれる、消滅魔法とも言うべきもの。


 対するキルバスは、片腕で握った剣でミエーカを吹き飛ばし、もう一方の手でテラスの拳を掴んで、ゼノに叩きつける。

 衝撃で消滅魔法は逸れて、キルバスの左腕だけを吹き飛ばす。


 吹き飛ばされたミエーカとゼノ、テラスは数kmに渡って地面を跳ねる。

 そこに追い討ちを掛けるように、キルバスは黒き光線を放つ。

 ミエーカはすんでのところで躱すが、ゼノとテラスは飲み込まれる。

 光線はそのまま地平線まで地面を抉った。


 光線を避けたミエーカがキルバスに光の斬撃を無数に放つ。

 左腕を闇の魔力で瞬時に治したキルバスは、両腕を振って黒い斬撃を放ち、ミエーカの斬撃を蹴散らす。

 しかし、その間に近付いていたミエーカが巨大化した光の剣を振るい、キルバスは吹っ飛ぶ。

 その吹っ飛んだ先に瞬間移動で現れるゼノ。

 上半身は服が破れている。

 おそらく服だけでなく体も傷付いたはずだが、フィヤネイトの魔法で回復したのだろう。


 ゼノは組んだ両手でキルバスを殴りつける。

 キルバスは物凄い速さで地面にぶつかる。

 衝撃で地面はひび割れ、大きく盛り上がる。

 そこにすかさず、ゼノは消滅魔法を放つ。

 大地を貫き、星の反対側まで突き抜ける。


 しかし瞬間移動で躱したキルバスは空中に現れる。

 両手の肘から先はなく、血が噴き出している。

 そこにゼノは間髪入れずに次の魔法を打ち込む。


 "天照あまてらす"


 太陽の光が一ヵ所に集まり、それ以外の場所は暗くなる。

 そして集まった光は、まっすぐキルバスへと落ちてくる。

 それは触れれば跡形も残らない灼熱の光。

 しかしキルバスは瞬時に治した両手から闇の光線を出して、ゼノの魔法を真っ向から迎え撃つ。

 二つの光は拮抗する。

 そこにゼノは次の魔法を放つ。


 "星照せいしょう"


 天照の影響で周囲の空は夜のように暗くなっていたが、そこに満天の星が光りだす。

 そして、その光が四方八方からキルバスに襲いかかる。


「舐めるな!」


 全方位に闇の魔力を放つキルバス。

 すべての光線を苦ともせず広がる闇は、そのままゼノをも飲み込もうとする。

 ゼノは魔法を解いて、瞬間移動で避ける。


 そして闇の魔力が収まった瞬間、無防備になったキルバスをテラスが蹴り飛ばす。

 吹っ飛んだキルバスは山脈にぶつかり、七つの山を貫いても止まらない。

 さらに回り込んだテラスが、山を貫いて出てきたキルバスの腹を殴り上げる。

 血を吐いて吹っ飛ぶキルバス。

 そこにミエーカが剣を振り下ろす。

 これをすんでのところで白刃取りしたキルバスは、ミエーカを引き倒して蹴り飛ばす。

 ミエーカは地面を何十kmも吹っ飛ぶ。

 そしてキルバスは襲いかかるテラスの拳は無視して、ミエーカを追う。


 ミエーカは吹っ飛んで、大陸東の港町までたどり着き、建物にぶつかる。

 衝撃で建物はいくつも壊れるが、町の人はフィヤネイトの結界で守られる。


 いくつもの建物にぶつかって止まったミエーカは立ち上がる。そして真上にキルバスがいることに気付く。


「これなら避けられないだろう?」


 キルバスは町の人を人質にして、黒い光線をミエーカに向ける。


 しかし、そこにテラスがやってきて蹴り飛ばす。

 キルバスは吹っ飛んで海に激突する。

 海が数kmに渡って割れる。


 海面から飛び上がるキルバス。

 そこに海水でできた二本の竜巻が襲う。

 ゼノの魔法だ。

 しかし今さら水の攻撃などキルバスには造作もない。

 軽々と消し飛ばす。


 だが一瞬あれば十分。

 間近に迫ったミエーカが聖剣を横に振るう。

 これを飛んで躱すキルバスだが、右足の膝から下を切り飛ばされる。

 さらにテラスの両手の掌底が背中にめり込み、血を吐きながら吹っ飛ぶ。

 そして吹っ飛んだキルバスに追い付いたミエーカがさらに剣を振るう。

 キルバスも黒い剣で受け止めるが片足がないので踏ん張りが効かず、さらに吹っ飛ばされる。

 くそっ、聖剣の光のせいで怪我の治りが遅いのか、とキルバスは苦虫を噛み潰す。


 ここぞとばかりに追い討ちを掛けるミエーカ。

 キルバスは剣を剣で受け止めながら、どんどん下がっていく。

 そのまま二人は大陸を縦横無尽に駆けていく。

 その姿は速すぎて一般人には見えないが、剣閃は尾を引く。

 人々は無数の白と黒の剣閃を目にする。

 そして剣閃が駆け抜けた大地は至るところが大きく抉られる。


 さらにミエーカがキルバスと切り結ぶところにテラスも加勢すると、激しさを増して、キルバスは追い詰められる。

 そして耐えられなくなって瞬間移動で逃げる。

 それを読んでいたゼノが、瞬間移動したキルバスの背後に現れて消滅魔法を放つ。

 キルバスは躱しきれずに、左半身を失う。

 だが、ちょうど回復した右足でゼノに上段蹴りを食らわす。

 受け止めた左腕は潰れ、ゼノは吹っ飛ぶ。

 瞬時に左半身を回復させたキルバスは追撃を掛けようとするが、テラスとミエーカが前に立ちふさがる。

 そしてまた三人は剣と剣と拳を交える。


 三人は大陸中を縦横無尽に駆け回り、あちこちにクレーターや地割れを作り出す。

 さらにゼノも加わって、戦闘はどんどん激しさを増していく。

 大地は揺れ、天は割れた。

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