第27話 鉄拳制裁
記憶を見終わったゼノは、キーラにかかっていた洗脳の魔法を解除した。
そこにアウレが医者を連れてやってきた。
「先生! 医者を連れてきました! 早く治療を!」
「ありがとう。でも、まだやることがあるから」
ゼノの言葉は静かだったが、たしかに怒りが含まれていた。
「やること?」
「後で説明する。俺が帰ってくるまで、この子を見といてほしい」
「大丈夫ですか?」
「洗脳は解けているから、急に暴れることはないと思う」
「分かりました」
「ありがとう。じゃあ行ってくる」
ゼノは瞬間移動した。
◇◇◇◇
大陸北東にあるカニラ王国の中にある町リンデン。
そこの領主ヤーデシルマ伯爵は、屋敷の一室にいた。
緑の髪を肩まで垂らした伯爵は、豪華な椅子に座り、優雅に紅茶を飲んでいた。
「あの娘のおかげで復讐できるぞ」
伯爵は上機嫌に目を瞑り、過去のことを思い出す。
かつて人造勇者を作ろうとした時、伯爵を非難した友を思い出す。
魔王が現れ、研究をできるようになったが、魔王が倒されるとすぐに研究は中止された。
その時、子供たちを普通の生活に戻すように命令してきた王や公爵たちのことを思い出す。
「私の研究を理解しない愚か者共がどんな顔をするか楽しみだ」
伯爵は笑いながら紅茶を啜る。
そんな伯爵の目の前にゼノが瞬間移動してきた。
そして間髪入れずに、伯爵の顔を殴った!
全力の拳がめり込み、伯爵は吹っ飛ぶ。
屋敷の壁を突き抜けて庭を二度三度と跳ねる伯爵。
その頭を掴んだゼノは再度瞬間移動する。
「何者だ!?」
ゼノが瞬間移動したのはカニラ王国の王宮だった。
突然現れたゼノと血だらけで気絶している伯爵に、広間にいた王侯貴族たちは驚く。
「覚えていませんか?」
「! あなたは!」
王はゼノの顔を見て思い出した。
魔王討伐を祝った宴でゼノと会っていることを。
ゼノが雷帝ゼノーリオであることを。
「いかなる用で?」
「この男が人造勇者の生き残りを洗脳し、私を殺そうとしました。処罰を」
「そのようなことが!? わ、分かった。厳重に処罰しよう」
国王は焦りながら言う。
「……それで終わりか?」
「いいえ! あなた方にも言いたいことがあります!」
ゼノの迫力に人々は怯える。
「いくら魔王が現れたとはいえ、このような非道な研究は許されません。公表したら生き残った子供に差別や被害が及ぶから、今回はこれ以上追及しません。しかし次同じことをしたら命を覚悟してもらいますよ」
「わ、分かった。約束しよう」
「あと、生き残った子には幸せになってもらわないといけない。決して手を出さないように」
「き、肝に銘じよう」
「以上です」
ゼノは瞬間移動で消えた。
残された王宮の人々は、急に現れたゼノへの驚きと恐怖で、しばし動けなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます