第22話 技の伝授
「はあ、昼寝は気持ちいいなあ」
怪我の療養を始めて三日目、ゼノは怪我で動けないことをいいことに、四六時中寝ていた。
「寝るのもいいですが、そろそろドラゴンを倒した技を教えていただけますか?」
床で指立て伏せを行っているムスキルが言った。
彼は失った右足以外の部位を鍛えるために、四六時中筋トレをしていた。
「ああ、そうだったね。アウレが帰ってきたら教えるよ」
ゼノは思い出したように言った。
そして二人は、アウレがお城探索から戻ってくるのを待った。
しかしアウレは中々戻ってこなかった。
その間、ゼノは寝続けたし、ムスキルは筋トレし続けた。
結局アウレが戻ってきたのは日が暮れてからだった。
豪華な黄色いドレスを身に纏い、胸には褒美で貰った緑の宝石のブローチを着けていた。
「お城ってすごいですね」
アウレは少し興奮していて、頬は上気していた。
結局その日はアウレのお城探索の話を聞いて、一日が終わった。
翌日、ゼノはアウレとムスキルにドラゴンを倒した技について説明した。
「まずどんな風にドラゴンを倒したかというと――――」
まずドラゴンを倒した状況を説明する。
「つまり技というのは魔力吸収のことだね」
「そんなことができるのか……」
ムスキルもアウレも驚いた。
「それほど、すごいことじゃないよ。人は元々、大気に漂う魔力を無意識に肌から吸収しているんだ。それを意識的にするだけだよ」
「私でもできるんですか?」
アウレが言う。
「うん、できるよ。魔無しも厳密には魔力を持っているからね。常人には感知できない、とっても少ない量だけど。生き物は魔力がないと生きていけないからね」
「つまり私でも魔法を使えるようになるんですね!」
アウレは目を輝かせた。
「うん。ただ万能というわけにもいかなくて、今回みたいに急激に魔力吸収をすると、体に馴染まないから死ぬ危険があるんだよね。通常魔力を吸収する時は、ゆっくりと体に合う魔力に変換しながら吸収しているからね」
「事前に吸収しておくことはできないのですか?」
ムスキルが聞く。
「できるよ。けど俺は魔王を倒す時に魔力回路がズタボロになっているから、ゆっくり吸収しても傷付くんだよね。もちろん魔力回路が正常なムスキルやアウレなら大丈夫なんだけど、ただ普段無意識に溜めている魔力以上を吸収すると、それを体内に留めておくのが大変なんだよね。ずっと意識しておかないとすぐに体外に出ていっちゃうから」
ゼノは説明を続ける。
「で、訓練方法は、まず感覚を研ぎ澄まして、体内に魔力が入ってきているのを分かるようにします。その後で体に力を入れたり抜いたり、肌で呼吸しているイメージをしたりする。そうすると、吸収する魔力量が増減しているのが分かるから、増えている時の感覚を覚えて、それを意図的にできるように、また早くできるように何度も繰り返す。これが訓練方法だよ」
「分かりました。やってみます」
アウレとムスキルは神経を研ぎ澄まし、魔力感知に集中する。
「最初は指先に集中した方がいいよ」
「はい」
アウレは指先を凝視する。
しかし指先に魔力が入ってくるのが見えないどころか、自分が纏っている魔力も見えなかった。
ムスキルも魔力を吸収しているのが見えない。
「まだ早いみたいだね。まあ地道に魔力感知の精度を高めていくしかないよ」
「……はい」
アウレは魔法が使えると舞い上がっていたので、とても残念そうにした。
「まあ、最初からできるもんじゃないですもんね。頑張ります!」
アウレは魔石を取り出して、魔力を感知する訓練を始めた。
「私もしよう」
ムスキルも同じく魔石を取り出して訓練を始めた。
そうしてアウレとムスキルは王宮に滞在している間、訓練に励んだ。
ゼノはずっと寝ていた。
そしてダンジョンブレイクから一週間が経ち、ゼノの怪我は治り、ムスキルの義足も完成した。
「いやあ、よかったよかった」
国王がゼノたちがいる部屋に入ってきた。
「怪我も治ったことだし、ぜひ宴に参加してくれないか。我らにおもてなしさせてくれ」
「ではお言葉に甘えて」
ということでゼノたちは宴に招かれた。
そして王や民衆から盛大に祝われた。
ゼノたちは珍味佳肴で腹を満たし、様々な余興を大いに楽しんだ。
そして翌日、盛大に見送られてクルタリを発った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます