俺がこよなく愛する真夜中マヨネーズ

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俺がこよなく愛する真夜中マヨネーズ

 深夜0時過ぎ。真夜中。


「そろそろいいかな……?」


 俺はベッドから起き上がり、そーっとドアを開ける。俺が歩くとミシミシと音が鳴るが、この程度の音は大丈夫だろう。


 俺は台所へと向かい、冷蔵庫を開ける。


「ふっふっふ……」


 今日はこれにしようかな。

 俺はキムチとマヨネーズを取り出す。

 キムチにマヨネーズをドバッとかけて、スプーンで一口。

 その瞬間、口の中にマヨネーズのまろやかな風味と、キムチの刺激的な味が口の中に広がる。


 うまい!!!!!!

 うますぎる!!!!!!


 この瞬間が最高なのだ。

 深夜0時過ぎに、マヨネーズと何かを組み合わせて食べる。これが俺の日々の習慣だ。

 俺はマヨネーズを愛していた。

 俺はマヨネーズを食べている時に1番の生を実感するのだ。

 しかし、マヨネーズはこの時間帯、真夜中にしか食べられない。それには訳があった。


◇ ◇ ◇


 数年前、俺が中学生の頃。

 俺はこの頃からマヨネーズが大好物で、それはもう毎日のように食べていた。

 飲んでいたと言ってもいいぐらいだ。

 マヨネーズ一本が、2日でなくなることもあったほどだ。


 当然、俺の体重はどんどん増えた。増え続けた。

 中学2年生にあがる頃には、体重は100を軽く超えていた。

 ハッキリいってデブである。

 俺の親は、俺がデブになってしまったことを重く受け止めているようだった。

 親は原因を考えて、ひとつの結論に至った。


 マヨネーズである。


 俺の親は、あろうことか俺の嫁であるマヨネーズを取り上げたのだ。これは許されざる行為である。

 その日から、俺の食卓にマヨネーズが並ぶことはなくなった。俺にとって、地獄の日々が始まったのである。


 しかし、数ヶ月後のこと。

 俺はある解決策を思いついた。

 親の見ていないところで、こっそり食べればいいのだ。

 我ながらいい案である。

 親は22時に就寝するため、深夜0時過ぎになれば、完全に眠っている。

 この時間なら親は俺の行動を制限できない。

 俺は真夜中まで起きて、こっそり台所でマヨネーズを食べる習慣ができた。

 これが、俺がこよなく愛する真夜中マヨネーズの始まりである。

 俺は地獄の日々から抜け出したのだ。


◇ ◇ ◇


 俺は高校生になっても、かかさずマヨネーズを食べていた。

 俺は度々、友人からこんなことを聞かれる。


「太ってることに危機感とかないの?」


 いいや。全く。俺はマヨネーズのためなら何だってできる。


「マヨネーズばっか食べて、飽きないの?」


 ありえないね。俺はマヨネーズのために生まれてきたんだ。

 俺はマヨネーズと共にある人生に幸福感すら覚えていたんだ。

 マヨネーズ、お前のためなら世界さえ敵にまわせるんだ。


◇ ◇ ◇


 そんなある日のことである。

 俺は今日も真夜中に起きて、台所へと向かった。

 大丈夫。親はぐっすり寝ている。


 俺は冷蔵庫を開けて、マヨネーズを取り出す。

 今日は何と合わせようかな……。


 俺は少し悩んだけど、あまりいいものがなかったので、今日はマヨネーズをそのまま直で飲むことにした。勘違いしないで欲しいのだが、これも大変な絶品である。


 俺はマヨネーズのキャップを開ける。

 マヨネーズのチューブを両手で持ち、容器の先を口に近づける。

 ドキドキ。

 この口に運ぶ瞬間はたまらない。


 よし、いくぞ。

 俺は勢いよく、マヨネーズのチューブを両手で握った。両手の力によってマヨネーズの容器の中身が押し出され、俺の口の中に飛び込んでいく……



 その時、俺は何が起きたのかわからなかった。



「お、おええええっっっっ!!!!!」


 口の中に激痛が走る。味による激痛なのか、衝撃による激痛なのかわからないほど痛かった。

 俺は口の中のマヨネーズを思わず吐き出した。

 ど、どういうことだ?

 何が起きたんだ?


 謎はすぐに解けた。


 俺は真夜中にマヨネーズを食べるときは、気をつけていることがあった。電気を点けると、親の部屋にまで明かりが漏れてしまい、親が起きてしまう可能性があったため、俺は電気を消してマヨネーズを食べていた。当然、冷蔵庫の電気も消す。家の構造的に、ちょうど冷蔵庫の明かりが親の部屋に真っ直ぐ届いてしまうからだ。俺はいつも手探りでマヨネーズを取り出していたのだ。


 これが、良くなかった。


 その日は、何故か冷蔵庫の中身がいつもの配置と異なっていたのだ。


 俺がさっきまでマヨネーズだと思い込んでいたものは、マヨネーズじゃなかった。


 ケチャップだった。








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